今日の診療
内科診断学

魚の生食後に出現した間欠的腹痛
56歳 男性
石井 直樹


現病歴:普段から魚を生食することが多い.来院2日前にカツオ,前日にイワシ,ヒラメを食べた.来院当日16時頃に上腹部痛が出現し,軽快しないために救急外来受診.腹痛は間欠的であり,数分ごとに増悪寛解を繰り返した.腹痛の出現後は排便,排ガスがなく,腹部の膨満感もある.

既往歴:脂質異常症.開腹歴なし.

内服薬:なし.

嗜好歴:飲酒は焼酎2合/日,喫煙は20本/日を36年間.

身体所見:意識は清明.身長179cm,体重86.3kg,体温37.1℃,脈拍88回/分(整),血圧174/94mmHg,呼吸数16回/分.結膜に貧血黄疸なし.心肺に雑音聴取せず.腹部は膨隆し,上腹部主体に圧痛・反跳痛を認める.筋性防御なく,腸蠕動音は正常.両側肋骨脊柱角(CVA)叩打痛なし.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

虚血性腸管障害

腸閉塞(内ヘルニア)

急性膵炎(慢性膵炎の急性増悪も含む)

悪性腫瘍

頻度の高い疾患

過敏性腸症候群

腸閉塞

悪性腫瘍

寄生虫症

急性膵炎(慢性膵炎の急性増悪も含む)

炎症性腸疾患

■この時点で何を考えるか?

 医療面接と身体診察を総合して考える点

 腹痛のほかに腹部膨隆,排ガスの停止といった腸閉塞症状を訴えている.重篤かつ迅速な処置が必要な疾患を否定しつつ診断を進めていく必要がある〔症候・病態編「腹痛」参照〕.

‍ 〈除〉心疾患を有する患者に強い腹痛がある場合は虚血性腸管障害を考慮する必要があるが,本症例では当てはまらない.常用的な飲酒歴があり,アルコール性急性膵炎,それによる麻痺性イレウスは鑑別の対象になる.急性膵炎による麻痺性イレウスでは,腹部膨隆が発症当日に顕著であることは少ない.

 開腹歴のない腸閉塞の原因としては,内ヘルニア悪性腫瘍,アニサキスなどの寄生虫症Crohn病などの炎症性腸疾患が重要である.ここでは〈p〉数日前にイワシなどの生魚を摂食していること,中年男性(炎

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