今日の診療
内科診断学

発熱・頭痛を伴った膿性痰
34歳 女性
有岡 宏子


現病歴:2週前から透明鼻汁と咳を自覚し,例年と同じ花粉症かと思っていた.昨日から黄色痰が出るようになり,38℃の発熱,頭痛を訴えて外来を受診した.

既往歴:スギ花粉症.毎年健康診断を受けているが異常を指摘されたことはない.

生活歴:専業主婦.夫と2人の子どもと4人暮らし.

喫煙歴:なし.

飲酒歴:なし.

家族歴:特記事項なし.

身体所見:意識は清明.身長150cm,体重47kg,体温39.7℃,脈拍112回/分,血圧117/69mmHg,呼吸数16回/分,SpO2 98%.咽頭が軽度に発赤.扁桃肥大はなく,白苔付着なく,頸部リンパ節腫大なく,甲状腺腫大なし.項部硬直なし.前頭部に持続性の頭痛あり.心雑音なし.呼吸音清明.腹部平坦・軟で圧痛なく,肝脾腫を認めない.四肢の浮腫を認めない.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

肺炎

髄膜炎

頻度の高い疾患

感冒

花粉症

急性気管支炎

急性副鼻腔炎

■この時点で何を考えるか?

 医療面接と身体診察を総合して考える点

 生来健康な成人女性であり,2週間の鼻汁と咳を訴えている.スギ花粉症の既往があり,当初は鼻汁も透明であったことからその症状と思われたが,この2日間38℃台の発熱,頭痛,黄色痰を伴うようになった.

 ここで注目すべきは黄色痰である.通常,〈p〉健常者にある程度の量の黄色痰を自覚する場合は肺炎副鼻腔炎を考えるべきである〔症候・病態編「咳,痰」参照〕.〈p〉膿性の鼻汁が後鼻漏として自覚されて痰と訴えることが多いので,鼻汁が咽頭の後ろに伝って降りてくる感じがないかを確認し,鼻汁と痰が同じ性状である場合には,痰ではなく鼻汁と判断するべきである.細菌性肺炎では膿性の痰を自覚することが多いが,〈p〉呼吸器系の基礎疾患をもたない健常者では細菌性の急性気管支炎をきたすことは稀で,多くはウイルス性の気管支炎で痰は伴わない.

 急性の副鼻腔炎では,ウイルス性の

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?