臨床判断を誤る心理機制
医師が診断を誤るときの心理過程は,一般にいうところの臨床判断(clinical judgment)を誤るときの心理過程の一部としてとらえることができる.われわれの下す臨床判断は,常に論理的で筋道だっているわけではない.むしろ,直感的で簡便な心理的早道(heuristics)を経て,短時間で下されることが多い.前者の論理的な判断と後者の心理的早道による判断とでは,ときにかなり異なる結論に至ることがある.
現在までに,少なくともBox-1図のような心理機序で,誤った臨床判断や誤診が引き起こされることが報告されている.
不運な結果と誤診
診療の結果,患者の健康状態が望ましくない結果(undesired outcome)になったからといって,すべて誤診というわけではない.undesired outcomeのなかには,その時点で最良の判断・決断をしたにもかかわらず,不可抗力に