診療支援
診断

部位別の身体診察:四肢
奈良 信雄(触診)
(日本医学教育評価機構 常勤理事/順天堂大学医学部 客員教授/東京医科歯科大学 名誉教授)
石橋 恭之(生体計測)
(弘前大学大学院整形外科学 教授)

 四肢の診察では,視診と触診が主となる.

 四肢の疾患には,四肢自体の局所的疾患だけでなく,全身性疾患に際して四肢の筋肉,関節,骨,血管が障害されることもある.また神経疾患ではしばしば四肢に病変があり,その診察が重要である.

 四肢を十分に露出し,全長にわたって入念に診察する.常に左右を比較し,上肢では手指,手,前腕,上腕,肩へと順を追って系統的に診察を進める.下肢では,足趾,足,下腿,大腿,鼠径部へと診察を行う.

視診

 四肢では,皮膚の性状,変形,運動,異常運動などをよく観察する.

皮膚の視診

 皮膚の異常所見は四肢の皮膚に出やすく,また発見しやすい.皮膚の色調,炎症性変化,発疹,浮腫,腫瘤などに注意する.

四肢の変形

上肢の変形

 左右の上肢は普通,対称性であるが,利き腕のほうが長く太いこともある.左右の上肢を比較するには,正確に計測して比較する〔後述の「生体計測」参照〕.明らかな左右の非対称は,先天的異常,外傷,骨折,浮腫などでみられる.外反肘はTurner(ターナー)症候群に特徴的である(図1)

手の変形

 骨折や外傷のほか,神経疾患,骨・関節疾患,代謝性疾患などで認められる.後天性の関節変形は,皮膚によるもの,結合組織によるもの,筋の麻痺や線維化によるもの,炎症性関節疾患によるもの,神経疾患によるものがある.特徴的な手の変形について述べる.

①鋤手(spade hand)

 先端巨大症の患者で,手が大きく,広く角ばった手掌と太い指のために,あたかも鋤のような形状を示す.

②くも状指(arachnodactyly)

 クモの脚のように指が細長くなった状態で,Marfan(マルファン)症候群でみられる.

③ばち状指(ばち指)(clubbed finger)

 手指の末節が太鼓の“ばち”のように腫大して,爪が前後左右から見ても凸状になったものである(図2).右-左シャントを伴う先天性心疾患,血管

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