診療支援
診断

脱水
dehydration
近藤 剛史
(徳島赤十字病院内科 副部長)
遠藤 逸朗
(徳島大学大学院生体機能解析学 教授)

脱水とは

定義

 脱水とは,臨床的には体液量,すなわち細胞外液量が減少した状態を指し,体液の主要成分である水と溶質(特にNa)の両者が喪失している.

 脱水は以下の3病型に分けられる.

①Naに比べ水が多く失われ,細胞外液の浸透圧が上昇する水欠乏性脱水(高張性脱水).

②水に比べNaが多く失われ,細胞外液の浸透圧が低下するNa欠乏性脱水(低張性脱水).

③両者が同じ割合で失われる混合性脱水(等張性脱水).

 細胞外液は,間質液と血漿水からなり,脱水ではいずれの体液分画も等しく減少する.

 しかし,膠質浸透圧の低下が顕著な場合は,間質液が貯留し,血漿水は減少することがある(ネフローゼ症候群など).このような場合は一般的な脱水とは異なるため,臨床的には血管内脱水と呼ばれる.

患者の訴え方

 患者は「喉が渇く」「立ちくらみがする」「フラフラする」「体がだるい」などと訴える.

患者が脱水をきたす頻度

 正確な頻度は不明であるが,発熱・発汗,消耗性疾患,脳血管障害などの意識障害,消化器疾患,糖尿病など,日常診療で多く経験する病態・疾患においてしばしばみられる.このため,その頻度はきわめて高い.

 また,不適切な輸液,血管造影における造影剤の使用,利尿薬の過剰投与など医原性に脱水を引き起こすことも多い.

症候から原因疾患へ

病態の考え方

水欠乏性脱水(高張性脱水)

 水分摂取の障害・不足,浸透圧利尿や尿崩症などによる腎性水分喪失,発熱や発汗過多,下痢(特に軽症のものや小児のもの)などによる腎外性水分喪失などによって生じる.

 水欠乏性脱水(高張性脱水)の場合,血清Na濃度が上昇して高張性となり,水分は細胞内から細胞外へ移動するため,細胞外液量は病態がかなり進行するまで維持され,細胞内脱水が主体となる.患者の訴えとしては,細胞外液の浸透圧上昇と細胞内脱水によるものが主体である.

 軽症(体重の2%前後の脱水,約1〜2Lの水欠

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