診療支援
診断

くも状血管腫,手掌紅斑
vascular spider,spider angioma,spider nevus(nevi)/palmar erythema
清澤 研道
(相澤病院消化器病センター 名誉センター長/肝臓病センター 顧問)

くも状血管腫,手掌紅斑とは

定義

くも状血管腫の定義

 くも状血管腫は中央に拍動する点状の細動脈があり,そこより放射状に血管が伸びて一見“くも”のように見えるため,この名前がある.大きさは直径1〜20mm程度まである.圧迫すると血流が途絶え血管腫は消失するが,圧迫を解除すると再び出現する.

 出現部位は上大静脈に注ぐ静脈が分布する皮膚領域であり,特に顔面,頸部,乳頭より上の前胸部,手背,手指,前腕,上腕,肩,肩甲部に出現する.

手掌紅斑の定義

 手掌紅斑とは,手掌,特に母指球・小指球および指球に紅潮した斑紋を認める場合をいう.圧迫すると紅斑は消失し,放すと再出現する.

 健常者でもときどき手掌が紅潮するが,その部位は全体のことがほとんどで,赤さは明るみを帯びて一様である.手掌紅斑では手掌中央部には紅斑がないか薄く,紅斑部にはむらがあり,ときには斑点状に見える.

患者の訴え方

くも状血管腫

 患者自身は,“赤い斑点”として気づくことが多いが,くも状血管腫には痛みや痒みはないため,そのものを主訴として受診することは少ない.

手掌紅斑

 「手が赤い」「手が赤くてほてる感じがする」と訴える場合がほとんどである.

患者が訴える頻度

くも状血管腫

 前頸部,胸部の赤い斑点を主訴として受診することがある(表1)

手掌紅斑

 表2に手掌紅斑をきたす疾患とその頻度を示した.肝硬変では全体の50%以上にみられるが,なかでもアルコール性肝硬変の場合には70%以上にみられる.

症候から原因疾患へ

病態の考え方

くも状血管腫

 くも状血管腫をきたす疾患を表1に示す.この病変が最も多く出現するのは肝硬変である.アルコール性肝障害,慢性肝炎,急性肝炎などの肝障害時でも稀ながら出現し,その他,妊婦,健常者にもみられる.ただし,肝硬変以外での出現個数は少ない.

 肝硬変では,ホルモンのバランスの崩れ,特にエストロゲンの代謝異常に起因するという

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