診療支援
診断

失語・失行・失認
aphasia,apraxia,agnosia
山口 修平
(島根県立中央病院 島根県病院事業管理者)

失語・失行・失認とは

定義

 失語・失行・失認は,言語・行為・認知に関する高次脳機能が大脳の病変により障害された状態を指す.

 言語野の障害によって,言語の理解と表出の障害された状態を失語という.言語機能の4つの様式である「話す」「聞く」「書く」「読む」のいずれかの障害が認められる.

 失行は,筋力,感覚,協調運動に障害がないにもかかわらず,特定の熟練した目的行為を遂行できない症状をいう.障害される行為の種類によりさまざまなタイプがあり,構成失行,観念運動失行,観念失行,肢節運動失行,着衣失行,口部顔面失行などに分類される.

 失認は,日常よく知っている対象を感覚器官に障害がないにもかかわらず認知できなくなる障害である.感覚の様式や対象の内容により,視覚失認,聴覚失認,触覚失認,相貌失認,地誌的障害,半側空間無視,身体失認,病態失認などに分類される.

患者の訴え方

 失語では,重度の場合には言葉で意思を伝達できなくなる.軽い運動性失語の場合には,「言葉がなかなか出てこない」という訴えがある.言語理解に障害をきたす感覚性失語の場合には錯語などが混じるため,訴えの内容をとらえにくい.いずれも患者の言語障害は,周囲の人から指摘されることが多い.

 失行の場合には,動作が不器用となり目的とする行為ができないと訴える.たとえば,はさみや箸などの道具が使えない(観念失行や肢節運動失行),服がうまく着られない(着衣失行)などの訴えがある.

 失認では,見るもの(視覚失認),触るもの(触覚失認),聞くもの(聴覚失認)の内容がわからないという訴えがある.さらに,運動麻痺などの自らの障害を自覚しなかったり,または否認したりする(病態失認).

患者が失語・失行・失認を訴える頻度

 これらの高次脳機能障害を訴える頻度は,外来患者の約0.7%と頻度は低い.この3つの症状のうちでは,失語症の頻度が最も高い.さらに,脳血管障

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?