診療支援
診断

めまい,悪心
65歳 女性
長井 篤
(島根大学医学部内科学第三 教授)

現病歴:入院日の起床時よりめまい,悪心があり,立てないということで,救急車で来院した.

既往歴:10年来高血圧症にて近医で加療中.

生活歴:喫煙・飲酒なし.

家族歴:特記すべきことはない.

身体所見:意識は清明.身長153.2cm,体重52.5kg,血圧140/86mmHg,脈拍63回/分,SpO2 97%(room air),体温36.6℃.心雑音なし,心拍に不整なし.頸動脈雑音を認めず.神経学的所見として,視野欠損なし,瞳孔は左右とも2mmで,対光反射は正常.眼球運動制限なく,眼振なし.表情筋筋力低下なし.構音障害なし.挺舌正中.上下肢のBarré(バレー)徴候やMingazzini(ミンガツィーニ)徴候陰性.深部腱反射は正常.粗大触圧覚に左右差・低下なし.立位で右への傾きあり,動揺感あり.上下肢の協調運動障害なし.排尿障害・排便障害・発汗障害を認めず.

【問題点の描出】

高血圧症で加療中の中高年女性.めまいの訴えであるが,悪心を伴っている.眼振や眼球運動障害を認めず,麻痺や知覚障害も認めない.右の体幹失調が疑われる.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

・脳出血,脳梗塞

・心房細動による脳塞栓

・末梢前庭性めまい

頻度の高い疾患

・Ménière(メニエール)病

この時点で何を考えるか?

医療面接と身体診察を総合して考える点

 本患者では,めまいを主訴として来院しているが,目の前が揺れるなどの末梢性めまい頭位めまい症Ménière病前庭神経炎など)に特徴的な訴えはない.ただ,悪心がみられており,末梢性めまいで動揺視の訴えがない場合もあり頻度も高いので,鑑別すべき疾患として念頭においておく必要がある.神経学的所見では眼振などの末梢性めまいを支持する所見はない.浮動性めまいの可能性があるが,小脳性と考えると上下肢の協調運動障害がないので確定的ではない.眼前暗黒感や気が遠くなる感じはなく,徐脈

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?