診療支援
診断

右後頭部痛,ふらつき
57歳 女性
山形 真吾
(島根大学医学部大田総合医育成センター・内科 教授)

現病歴:週末の仕事を終え,夕方5時過ぎに自家用車を運転して帰宅の途についた.運転中に右頸部痛が出現した.右項部から右後頭部さらに右眼の奥に広がる痛みで,しばらく車を傍らに寄せて休憩後に帰宅.車から降りて歩く際に,右へ傾くような違和感を感じた.自宅にて休んでいたが,右後頭部痛と歩行時のふらつきは変わらず.救急要請し,発症から約5時間の経過後に受診した.

既往歴:特記すべきことはない.

身体所見:血圧156/94mmHg,脈拍74回/分(整).意識は清明,表情は不安そうである.構音はほぼ正常.上肢Barré(バレー)徴候陰性,Mingazzini(ミンガツィーニ)徴候陰性,深部腱反射に左右差なし.病的反射を認めず.触覚に左右差なし.結膜に異常なく,眼球に圧痛は認めず.眼窩・頸部に血管雑音を認めず.右眼瞼下垂を認める.

【問題点の描出】

これまで健康な57歳女性.運転中に突然,右頸部から後頭部・右眼の奥の痛みを生じた.歩く際に右へ傾く感じを自覚.右眼球の圧痛なし.右眼瞼下垂を認める.明らかな麻痺はなし.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

・くも膜下出血

・脳梗塞

・解離性動脈瘤

・緑内障

・頸椎硬膜外血腫

頻度の高い疾患

・頸椎症

・片頭痛

・末梢性めまい

・脳梗塞

・緑内障

・うつ状態

この時点で何を考えるか?

医療面接と身体診察を総合して考える点

 頸部から右眼の奥の痛みにて発症,歩行時のバランス障害を生じ来院した.救急初診医の診察では,麻痺はなく,深部腱反射の異常や病的反射は認めなかった.

 本例の後頭部痛は急性発症の片側痛であり,周囲に波及あるいは放散するような特徴を示す.〈除〉くも膜下出血の除外診断は必要だが,〈除〉解離性動脈瘤や頸椎硬膜外血腫も鑑別リストに加えておきたい.また,歩行時のふらつきはめまいというとらえ方も可能であり,〈p〉末梢性めまいと中枢性めまいの鑑別が挙がってくる.その際,〈p〉めまい以

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