診療支援
診断

顔面痛
62歳 男性
小林 祥泰
(小林病院 理事長)

現病歴:数日前に山に行き薮のなかを歩いたとき,棘のある枝に触れ左額に小さな傷ができたが出血もすぐ止まったのでそのままにしていた.昨日夕方から左前額部の発赤と痛みが出現,今朝になり発赤腫脹が左前額部全体に広がり,悪寒を伴って38℃の発熱も出現,痛みもひどくなってきたので受診.

既往歴:糖尿病で内服治療中,最近のHbA1cは7.2前後.

生活歴:農業と害獣駆除をしている.

家族歴:特記すべきことはない.

身体所見:意識は清明.身長165cm,体重60kg,体温38℃,脈拍90回/分(整),血圧120/82mmHg,呼吸数16回/分.左前額部を中心にやや右前額部に及ぶ境界明瞭な帯状の光沢のあるやや硬く厚い発赤腫脹があり痛みが強い.熱感・圧痛あり.水疱なし.眼瞼結膜正常.側頭動脈正常.視力・視野正常.顔面麻痺なし.咽頭・舌正常.聴力正常.項部硬直なし.頸部リンパ節左で軽度触知.胸部正常.腹部正常.四肢に皮疹や浮腫なし.関節正常.四肢運動,歩行正常.

【問題点の描出】

軽微な前額部外傷後に左前額部から右にも少し及ぶ境界明瞭なやや硬くて厚い発赤腫脹あり,悪寒発熱あり.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

・丹毒

・蜂窩織炎

・壊死性筋膜炎

・伝染性膿痂疹(とびひ)

・帯状疱疹

頻度の高い疾患

・丹毒

・蜂窩織炎

この時点で何を考えるか?

医療面接と身体診察を総合して考える点

 病歴から前額の小さな傷ののち,その周辺に発赤腫脹が出現し発熱もあるので皮膚の感染性炎症を考える.身体所見で左前額部全体が固く発赤腫脹しており,同時に強い痛みがあることから丹毒など皮膚の蜂窩織炎を考える.

 丹毒は主に,表皮の内側にある真皮で起こる細菌感染症で,顔面に起こりやすい.原因菌はA群溶血性連鎖球菌であることが多い.急速に赤く盛り上がって広がる腫れは,触れると強い痛みを伴い,圧迫すると痛みが増強する.顔や下肢の傷,虫刺され痕などから菌が侵入

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