診療支援
診断

難聴,耳鳴
61歳 男性
野口 佳裕
(国際医療福祉大学医学部耳鼻咽喉科学 教授)

現病歴:朝起きて数時間してから右耳が聞こえないことに気づいた.右耳鳴もしている.夕方からフワフワするめまいも自覚するようになった.翌日も右難聴が治らないので受診となった.これまでに,めまいや難聴を自覚したことはない.

既往歴:高血圧.

生活歴:喫煙歴なし,飲酒歴はビール350mLを週1〜2回程度.

家族歴:特記すべきことはない.

身体所見:意識は清明.体温36.1℃,脈拍80回/分(整),血圧122/76mmHg.鼓膜は正常であり,ほかの脳神経学的異常を認めない.

【問題点の描出】

高血圧の既往のある61歳男性.突然発症した一側性難聴,耳鳴,めまいによって受診.鼓膜所見は正常である.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

・前下小脳動脈領域の脳梗塞

・聴神経腫瘍

頻度の高い疾患

・突発性難聴

・急性低音障害型感音難聴

・Ménière(メニエール)病

・外リンパ瘻

この時点で何を考えるか?

医療面接と身体診察を総合して考える点

 急性に生じた一側性難聴は,原因がある場合と明らかでない場合がある.外耳道の耳垢栓塞が急性難聴の原因になることがあるため,最初に耳鏡検査にて外耳道,鼓膜を診察する.鼓膜が正常であれば急性感音難聴が疑われ,その場合副腎皮質ステロイド薬を中心とした早期治療が必要となる.

 本症例の場合,突然一側性の難聴を自覚している.鼓膜は正常であることから右急性感音難聴が疑われる.

 急性感音難聴では,頭部外傷による側頭骨骨折・内耳振盪症音響外傷外リンパ瘻などの原因・誘因のある疾患を医療面接により鑑別することが重要である.音響外傷では射撃,ロックコンサート,大音量での音楽聴取,エアバッグ展開などが原因となり,外リンパ瘻では鼻かみ,くしゃみ,重量物運搬,力み,爆風,ダイビング,飛行機搭乗などが誘因になりうる.ムンプス難聴は,診断基準上,耳下腺や顎下腺腫脹発現の4日前から発症後18日以内に発症した急性高

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