診療支援
診断

口渇
16歳 男性
近藤 剛史
(徳島赤十字病院内科 副部長)
遠藤 逸朗
(徳島大学大学院生体機能解析学 教授)

現病歴:半年前から口渇を自覚するようになり,1日3〜4Lの飲水があった.夜間の排尿回数も増えたため受診した.

既往歴:特記すべきことはない.

生活歴:高校生.夜間は3〜4回ほど排尿で起きる.口渇の日内変動はない.半年で3kgの体重減少がある.

家族歴:祖父が糖尿病.

身体所見:意識は清明.身長161cm,体重41kg,BMI 15.8kg/m2,脈拍92回/分(整),血圧122/78mmHg.頸部リンパ節を触知しない.口腔粘膜・舌粘膜の乾燥なし.皮膚正常湿潤.耳下腺・顎下腺腫脹なし.甲状腺腫大なし.結膜貧血・黄疸なし.心音・呼吸音異常なし.腹部は平坦,軟で,肝・脾を触知しない.腹水なし.下腿浮腫なし.末梢静脈の虚脱なし.

【問題点の描出】

成育歴に異常がない16歳男性.半年前から自覚した口渇,多飲で受診.身体所見ではバイタルサインの著変はなく,診察上明らかな異常所見はない.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

・尿崩症

・糖尿病性ケトアシドーシス

・慢性腎不全

頻度の高い疾患

・糖尿病

・電解質異常(低K血症,高Ca血症)

・心因性多飲症

・Sjögren(シェーグレン)症候群

この時点で何を考えるか?

医療面接と身体診察を総合して考える点

 口渇の訴えが真の口渇なのか,口腔内乾燥感なのかを判断することが重要である.

 真の口渇をきたす疾患の鑑別のなかで,身体所見上は脱水や溢水をきたす疾患は考えにくい.口渇があり,多飲はあるが,体液の恒常性は維持されており,糖尿病や尿濃縮力低下をきたす尿崩症電解質異常心因性多飲症が鑑別に挙がる.間質性腎炎による腎不全では尿濃縮能の低下から多尿および脱水をきたすことがあるため,やはり鑑別が必要である.

 口腔内乾燥感の場合は,Sjögren症候群を念頭におくことと,常用薬の確認が必要となる.真の口渇の場合,血漿浸透圧の上昇や脱水などによる循環血漿量の減少をきたす背景の有無,

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