診療支援
診断

吐血
43歳 男性
松本 将吾
(医療法人社団善仁会小山記念病院消化器内科)
山本 桂子
(北海道大学大学院光学医療診療部 助教)

現病歴:前日の就寝前に日本酒を3合程度飲酒した.朝目が覚めてすぐに1回嘔吐し,その後に多量の鮮血の吐血を認めたため,救急搬送となった.

既往歴:特記すべきことはない.上部消化管内視鏡検査の施行歴はない.

生活歴:喫煙歴なし.飲酒歴は日本酒3合をほぼ毎日.

家族歴:特記すべきことはない.

身体所見:意識は清明.身長171cm,体重52kg,脈拍113回/分(整),血圧80/55mmHg,呼吸数24回/分,SpO2 100%(room air).眼瞼結膜に貧血はなく,眼球結膜に黄染を認めない.心音,呼吸音に異常を認めない.腹部は軽度膨満あるが軟で,肝・脾を触知しない.

【問題点の描出】

飲酒の習慣のある43歳男性.嘔吐後に出現した吐血によって救急搬送され,搬送直後は収縮期血圧80mmHgのショック状態である.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

・食道静脈瘤破裂

・胃静脈瘤破裂

・悪性腫瘍(食道癌,胃癌)

頻度の高い疾患

・消化性潰瘍(出血性胃・十二指腸潰瘍)

・Mallory-Weiss(マロリー・ワイス)症候群

・急性胃粘膜病変

この時点で何を考えるか?

医療面接と身体診察を総合して考える点

 吐血で受診した患者に対しては,まず〈p〉その緊急性を第一に考える必要がある

 今回の症例の場合は,収縮期血圧80mmHgと低下を認め,出血性ショックの可能性が考えられる.その場合は,まず迅速に静脈路の確保を行い,循環動態を維持するために輸液投与を行う.また,必要に応じて輸血が可能な留置針を選択して複数の末梢静脈路,場合によっては緊急で中心静脈カテーテルを留置する場合もある.静脈路の確保の際には同時に〈p〉採血を行い,現在の貧血の程度を確認し,血中尿素窒素(UN)/クレアチニン(Cr)比から出血部位などを想定する

 出血源の同定と止血処置を急ぐため,〈p〉輸液や輸血で血圧が維持できる状況であれば,緊急内視鏡の準備を

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