診療支援
診断

手掌紅斑,下腿浮腫
71歳 男性
清澤 研道
(相澤病院消化器病センター 名誉センター長/肝臓病センター 顧問)

現病歴:20歳代から毎日500mLの缶ビールを2缶飲んでいた.65歳からは焼酎も水割りでコップ1杯飲むようになった.3年前から焼酎が徐々に増え3杯になった.最近手掌が赤くなったのと下腿に浮腫が出現するようになり受診した.

既往歴:痛風.

生活歴:妻と2人暮らし.会社定年後飲酒量が増えた.

家族歴:父親が糖尿病.

身体所見:意識は清明.身長160cm,体重71kg,BMI 27.7,血圧145/92mmHg.眼瞼結膜に貧血あり,眼球結膜に黄疸なし.手掌紅斑は両側にあり(図1).前頸部から前胸部にかけて多数のくも状血管腫あり(図2).女性化乳房あり.腹部所見は平坦.肝臓は右肋骨弓下3cm,正中線,剣状突起下に5cm触れる.硬く,辺縁鈍,表面不整.脾臓は右側臥位で左肋骨弓下に3cm触れる.中央部に切痕を触れる.下腿に浮腫あり.

【問題点の描出】

20歳代からのアルコール多飲者.65歳以降はさらに焼酎も飲むようになり多量飲酒者となる.肥満体,貧血,手掌紅斑,多数のくも状血管腫あり.腹部触診で硬く腫大した肝臓と脾臓を触知する.下腿に浮腫あり.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

・肝硬変

・悪性リンパ腫,白血病

・骨髄増殖性疾患

・膠原病

・溶血性疾患

頻度の高い疾患

・肝硬変

・急性ウイルス感染症(伝染性単核球症,ウイルス肝炎など)

・膠原病

・溶血性貧血

この時点で何を考えるか?

医療面接と身体診察を総合して考える点

 20歳代からの飲酒歴あり,特に65歳からは多量飲酒者となっている.身体所見で貧血,手掌紅斑・くも状血管腫,浮腫,腹部所見で硬い肝臓と脾臓を触知する.病態としては肝硬変とそれに伴う門脈圧亢進を考える.

診断仮説(仮の診断)

肝硬変

必要なスクリーニング検査

 尿検査,血液凝固検査,血液生化学検査,腹部超音波検査.

検査結果

尿検査:外観淡黄色,混濁なし.蛋白(−),糖(−).

血液凝固検査:WBC 6,320

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