診療支援
診断

便が出ない
47歳 男性
津田 桃子
(北海道対がん協会札幌がん検診センター内科 部長)

現病歴:半年前から便が細くなった.便秘だと思い,市販薬を服用していた.徐々にお腹が張るようになり,便も出にくくなってきた.ここ1か月で体重は10kg減少した.数日前より完全に便が出なくなり,お腹の張りが強くなり,腹痛と悪心も出現してきたため来院した.

既往歴:特記すべきことはない.

生活歴:喫煙15本/日,飲酒は機会飲酒程度.

家族歴:特記すべきことはない.

身体所見:意識は清明.身長175cm,体重52kg,発熱なし,脈拍65回/分(整),血圧90/66mmHg,呼吸数22回/分,SpO2 98%(room air).腹部の全体的な痛みがあり,腹部は著明に膨隆しており,打診では波動を触知する.両下肢の浮腫あり.

【問題点の描出】

半年前から徐々に便通異常を認めていた47歳男性.10kgの体重減少,数日前から排便がなく,腹痛と悪心も出現している.腹部膨隆を認める.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

・大腸癌

・イレウス

・穿孔

・腹膜炎

頻度の高い疾患

・機能性便秘

・過敏性腸症候群

・薬剤性便秘

・代謝内分泌疾患による便秘(糖尿病,甲状腺機能低下など)

この時点で何を考えるか?

医療面接と身体診察を総合して考える点

 腹痛を主訴に受診した患者に対しては,まずバイタルサインを確認し,救急処置を要する状態であるかを判断する.まずは,緊急性を第一に考える必要がある.

 今回の患者の場合,数日前より完全に便が出なくなり,悪心も出現している.経過は半年前からと慢性的であるが,ここ数日で症状が急に変化もしており,すぐに検査を進めていく必要がある.高度の血圧低下などの全身状態の変化を認めていないため,緊急での救命措置が必要な状態ではないと判断し,医療面接,身体診察,および検査を迅速に進めていく.

 便秘は,さまざまな臓器障害が原因で起こる頻度の高い症状である.腹痛も伴う場合は,便秘に基づく腹痛症状か,原疾患による腹痛症状

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