診療支援
診断

下血
75歳 男性
西川 秀司
(市立札幌病院 院長)

現病歴:約1か月前から暗褐色の下血がときどき出現.経過をみていたが,持続するため受診.

既往歴:66歳時に脳梗塞.

生活歴:アルコールはビール350mL/日,毎日.タバコ20本/日,48年間.

家族歴:特記すべきことはない.

身体所見:意識は清明.身長170cm,体重65.5kg,体温35.8℃,脈拍74回/分(整),血圧134/90mmHg.眼瞼結膜軽度貧血あり.腹部平坦.

【問題点の描出】

今まで消化器系疾患の既往のない75歳男性,約1か月前から下血が持続.腹痛はなく,身体診察でも明らかな所見は認めない.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

・腫瘍性病変

頻度の高い疾患

・腫瘍性病変

・消化性潰瘍

・出血性腸炎

・憩室出血

・消化管血管拡張症

この時点で何を考えるか?

医療面接と身体診察を総合して考える点

 消化管出血の場合は多量出血で全身状態が不良の場合もあり,ショック状態にあるか否かを迅速かつ的確に判断することが最も重要である.ショック状態であれば全身管理を優先した治療を行う.

 本症例ではバイタルサインに問題なく,「めまい,立ちくらみ」などの貧血症状も認めず全身状態は安定していた.

 便の性状からある程度出血部位の推測は可能である.しかし,上部消化管出血であっても出血量が多く,胃,消化管内にとどまる時間が少なければ鮮やかな鮮血便となることもあり,出血量と部位によりいろいろな性状となる.

 本症例は暗褐色の下血であり,口腔から肛門までのすべての消化管からの出血が原因となりうる.消化管疾患のみならず,肝胆膵疾患,白血病をはじめとする血液疾患血管性疾患など消化管出血をきたしうるすべての疾患を念頭におく必要がある.

 腹痛,発熱,下痢などの症状がないことより,潰瘍性病変炎症性病変の可能性は低いと考える.

診断仮説(仮の診断)

腫瘍性病変

・憩室出血

・消化管angioectasia

・消化性潰瘍

・出血性腸炎

必要な

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