診療支援
診断

月経異常
38歳 女性
片山 茂裕
(埼玉医科大学 名誉教授/名誉病院長)

現病歴:3年くらい前より寒がりになり,全身倦怠感・食思不振が出現.2年前から無月経となり,数か月前より両側外側が見にくいことに気づいた.ここ3年間で体重が6kg減少している.

既往歴:29歳時,第1子妊娠・出産.

生活歴:特記すべきことはない.

家族歴:特記すべきことはない.

身体所見:意識は清明.身長167cm,体重56kg,体温35.4℃,血圧108/78mmHg,脈拍72回/分(整),呼吸数20回/分.頸部リンパ節を触知しない.甲状腺を触知しない.心音・呼吸音に異常を認めない.腹部は平坦・軟.皮膚はやや乾燥.腋毛・恥毛はやや粗.

【問題点の描出】

耐寒性の低下,全身倦怠感・食思不振・体重減少に引き続き,無月経と両側外側が見にくいという視力障害が出現した.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

・視床下部障害

・下垂体前葉機能低下症

・高プロラクチン(PRL)血症やプロラクチノーマ

・甲状腺機能低下症

頻度の高い器質性疾患

・下垂体腺腫

・頭蓋咽頭腫

・鞍上部胚芽腫

この時点で何を考えるか?

医療面接と身体診察を総合して考える点

 全身倦怠感・食思不振・体重減少などはありふれた症状であり,さまざまな疾患が考えられる.しかしながら,〈p〉耐寒性の低下を訴え,皮膚の乾燥,腋毛・恥毛の脱落,両耳側の視野の欠損と続発性無月経が出現している〈p〉このような症候や診察所見から,甲状腺機能低下症や性腺機能低下症が疑われる〈p〉全身倦怠感・食思不振・体重減少など,グルココルチコイド(コルチゾール)の欠損による症候と推論することもできる.これらの症候を一括して説明できるのは,下垂体前葉機能低下症であることを想起する.〈p〉下垂体前葉機能低下症により,続発性副腎皮質機能低下症・続発性甲状腺機能低下症・続発性性腺機能低下症が惹起され,両側外側(両耳側)の視力障害と無月経から,視床下部か下垂体近傍の病変を想起し,鑑別診断を

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