診療支援
診断

頻尿
59歳 女性
清水 芳男
(順天堂大学医学部附属静岡病院腎臓内科 教授)
富野 康日己
(順天堂大学 名誉教授/医療法人社団松和会 理事長)

現病歴:3か月くらい前から昼夜を問わない頻尿が現れ,尿意切迫感が認められたため受診した.毎日急に尿がしたくなり,我慢ができないことがある.日中は10回程度,夜間も2回以上の排尿がある.1回の排尿時での尿量は少ない.

既往歴:特記すべきことはなく,1年前の健康診断でも異常なし.常用する薬物もない.妊娠・出産歴は妊娠1回,出産1回(自然分娩).

生活歴:喫煙なし,飲酒は月1回程度の機会飲酒(ビール1杯程度).会社員(事務職).

家族歴:特記すべきことはない.

身体所見:意識は清明.身長155cm,体重62kg,血圧128/76mmHg,脈拍80回/分(整).腹部は平坦・軟で圧痛なし,腫瘤を触知せず,背部叩打痛なし.下腿浮腫なし.

【問題点の描出】

大きな健康問題をかかえていない59歳の女性.3か月くらい前からの頻尿と尿意切迫感出現.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

・心疾患

・尿路系悪性腫瘍

・脳血管疾患(神経変性疾患を含む)

・薬物性

・慢性閉塞性肺疾患

頻度の高い疾患

・尿路感染症

・尿路結石症

・慢性腎臓病

・過活動膀胱

・糖尿病

この時点で何を考えるか?

医療面接と身体診察を総合して考える点

 頻尿は〈p〉緊急性を伴う疾患である心疾患脳血管疾患悪性腫瘍が隠れていることがあるので注意が必要である.この患者では症状の出現は緩徐であり,心不全閉塞性肺疾患を示唆する〈除〉息切れや労作時疲労感・動悸,脳血管疾患を疑わせるしびれや麻痺がないため緊急での処置は不要と判断し,医療面接および身体診察,検査を進める.

 頻尿の原因は下部尿路疾患によるものが多いが,先入観にとらわれないよう配慮する.患者の訴えが〈p〉尿意切迫なのか,総尿量の増加なのか,排尿回数の増加なのかを正確に聴取し,頻尿に随伴する症状や所見を詳しく取り上げることにより,原因疾患を絞り込むことが可能であるため,医療面接が重要である.

 この患者では「尿意

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