診療支援
診断

左股関節痛
58歳 女性
山田 茂
(国立病院機構京都医療センター整形外科 診療科長)

現病歴:1か月前から,誘因なく,歩行時に左大腿から膝にかけての痛みを自覚,次第に痛みが左股関節に集中するようになった.他院で股関節,膝および腰椎の単純X線撮影を受け,坐骨神経痛と診断された.物理療法や鎮痛薬投与を受けるも,痛みは悪化傾向である.

既往歴:高血圧,脂質異常症.

生活歴:飲酒歴は20歳から毎日日本酒一合,喫煙歴はなし.

家族歴:母親が高血圧.

身体所見:疼痛による跛行を呈す,股関節および膝関節の可動域に明らかな左右差なし,Patrick(パトリック)テスト左陽性

【問題点の描出】

アルコール多飲あり.腰からの神経痛としての治療が奏効しない.前医では単純X線撮影で股関節の異常を指摘されなかったが,必ずしも股関節に異常がないとはいえない.Patrickテストは仰臥位で一方の股関節を屈曲,外転,外旋し,足を反対側大腿に乗せて「4の字」の形にして膝を上から押す徒手検査で,股関節,鼠径部に痛みを訴えれば股関節の異常を疑う.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

・特発性大腿骨頭壊死症

・化膿性股関節炎

・転移性骨腫瘍(骨盤および大腿骨近位部)

頻度の高い疾患

・変形性股関節症

・腰椎疾患

・恥骨骨折などの脆弱性骨盤輪骨折

この時点で何を考えるか?

医療面接と身体診察を総合して考える点

 一般に股関節痛があれば股関節疾患を考えるが,腰椎疾患や恥骨骨折など,股関節以外の疾患で股関節部に痛みを訴えることがある.また反対に,股関節疾患であるにもかかわらず大腿や膝に痛みを訴え,腰椎由来の神経痛や膝関節疾患と誤診されることもあるので注意する.本例ではPatrickテスト陽性であることから股関節疾患を第一に考える.アルコール多飲にも留意する.

診断仮説(仮の診断)

特発性大腿骨頭壊死症

・変形性股関節症

必要なスクリーニング検査

●股関節単純X線(当初異常を発見できなくても,期間をおいて撮影すると所見が明らかになることもある

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