診療支援
診断

持続する手の痙攣
52歳 女性
小林 祥泰
(小林病院 理事長)

現病歴:数日前,感冒でくしゃみ,鼻水,倦怠感があった.2日前の夕食後から左親指がピクピクする動きがときどき出現.今朝になり左親指のピクつきが持続するようになった.普通に食事も水分もとっていたがなぜか口渇,倦怠感,多尿もあるため受診した.

既往歴:痙攣発作なし.1年前健診で空腹時血糖高値を指摘されたがHbA1cは正常上限だったので経過観察していた.

生活歴:35歳から飲食店を主人とともに経営しており調理も担当している.

家族歴:父親に糖尿病があるも経口薬で管理良好.

身体所見:意識は清明.身長160cm,体重49kg,脈拍72回/分(整),血圧130/82mmHg,呼吸正常,SpO2 98%(room air).甲状腺腫なし.皮膚弾性正常.舌やや乾燥傾向,ケトン臭なし.胸部・腹部正常.四肢腱反射すべて正常.筋力正常.筋トーヌス正常.知覚正常.左親指に限局したピクつきが肢位にかかわらず持続.

【問題点の描出】

急に始まった繰り返す左手の限局性痙攣.軽度な2型糖尿病あり.数日前から感冒症状.多尿,口渇あり.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

・脳腫瘍

・サルコイドーシス

・高浸透圧性高血糖症候群

・MELAS(ミトコンドリア病)

・Creutzfeldt-Jakob(クロイツフェルト・ヤコブ)病

・Rasmussen(ラスムッセン)脳炎(小児)

頻度の高い疾患

・高浸透圧性高血糖症候群

・Rasmussen脳炎(小児)

この時点で何を考えるか?

医療面接と身体診察を総合して考える点

 左手の不随意運動は振戦ではなくピクつきであり,珍しいが持続性局所性痙攣が疑われる.今までてんかん発作既往もなく神経学的随伴症状もないので,局所性痙攣発作をきたす疾患,たとえば髄膜腫髄膜サルコイドーシスなどを考える必要がある.しかし,これらが運動野近傍にできた場合はてんかんのタイプとしてはJackson(ジャクソン)痙攣が多い.M

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