診療支援
診断

ろれつが回らない
67歳 男性
安部 哲史
(島根大学医学部内科学第三 講師)

現病歴:2年ほど前から,会話の際に,ろれつが回らず言葉を滑らかに話せなくなった.家族からも聞き取りづらさを指摘されるようになったため,専門外来を受診.同時期から,起立時や歩行時にふらつき感もあり,転びそうになることが増え,小走りや階段昇降が難しくなった.日内あるいは日差変動を自覚することはない.

既往歴:特記すべきことはない.

生活歴:喫煙歴なし.大量飲酒歴はなく,機会飲酒程度.

家族歴:神経筋疾患の既往を有する者なし.

身体所見:バイタルサイン異常なし.意識は清明.義歯装着なし.発語では,語頭が突然吹き出すように大きな声となり,リズムやイントネーションが乱れ,語尾は不明瞭.錯語なく,会話の内容は正確.復唱は可.失読や失書なし.計算可.失行や失認なし.眼球運動はやや跳躍性で注視方向性眼振あり.上部・下部顔面筋に異常なし,軟口蓋の挙上は良好,挺舌正中.運動や感覚に異常所見なし.深部腱反射正常,病的反射なし.指鼻試験は拙劣で測定過大や運動分解,企図振戦あり.反復拮抗運動,踵膝試験も拙劣.歩行は開脚歩行.髄膜刺激症状なし.膀胱直腸障害なし.

【問題点の描出】

2年前(65歳時)から歩行障害などの運動症状を伴い,緩徐進行性に増悪する構音障害のため受診.小脳失調症状がみられている.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

・脳血管障害

・炎症性疾患

・運動ニューロン疾患

・感染症

・傍腫瘍症候群

頻度の高い疾患

・神経変性疾患

この時点で何を考えるか?

医療面接と身体診察を総合して考える点

‍ 〈p〉言語障害の症例をみた場合に,まず失語症構音障害とを鑑別する必要がある.本症例では〈p〉会話による疎通や復唱が可能であり,失読や失書はみられないことなどから,構音障害と考えられる〈p〉構音障害の場合,脳神経(顔面神経,舌咽・迷走神経,舌下神経)の異常による場合と小脳の異常による場合とがある.本症例では,こうした脳神経の

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