現病歴:職場(介護施設)からの帰宅途中,同僚が運転する車の助手席に乗っていたが気分が悪くなり,車をコンビニの駐車場に停めてもらったところで意識消失,同僚が救急車を呼んだ.
既往歴:6年前に心肺停止で他病院に救急搬送され,冠攣縮性狭心症の診断を受けていた.内服薬で状態が安定していたので,近くの開業医でフォローされていた.
生活歴:喫煙歴なし,飲酒歴は機会飲酒.
家族歴:特記すべきことなし.
身体所見:救急隊到着時,意識なし,脈拍触知できず,呼吸なく心肺停止と判断.同僚による一次救命処置あり.救急隊員接触時に心室細動(VF)でただちに除細動を行い,心肺蘇生(CPR)を継続.病院到着時,医師は心拍再開(ROSC)を確認.
【問題点の描出】
日常生活を送っていた41歳女性が,突然意識消失し心肺停止となった.致死的不整脈による心肺停止の既往があり,冠攣縮性狭心症の診断を受けていたが,内服薬で状態が安定していたとのことで,埋込型除細動器(ICD)植え込みには至っていなかった.
診断の進め方
特に見逃してはいけない疾患
・虚血性心疾患(急性心筋梗塞,狭心症)
・重篤な不整脈(QT延長症候群,特発性心室細動,高/低K血症など)
・くも膜下出血
・脳出血
・急性大動脈解離
・肺血栓塞栓症
この時点で何を考えるか?
医療面接と身体診察を総合して考える点
心肺停止時には患者の意識はなく,患者の訴えはない.何も訴えることができず,反応がないのが心肺停止である.救急要請された救急隊員は,現場にいた同僚から話を聞いたが,患者の既往歴や生活歴,内服について何も知らなかった.救急救命士は,家族に連絡をとり,現在心肺停止状態にあることを説明し,特定行為を行うことを説明し同意を得た.同時に,〈p〉既往歴として,家族から6年前に心肺停止で他病院へ救急搬送歴があることを聞き出し,医師に報告した.医師は,心疾患の既往と突然の心肺停止から,心臓由来