診療支援
診断

左半身麻痺
80歳 男性
根本 繁
(関東労災病院 院長/東京医科歯科大学 名誉教授)

現病歴:肺炎で入院中,突然左半身麻痺が出現した.意識は清明であったが,構音障害と右への共同偏視が認められた.発症から2時間経過していた.

既往歴:高血圧症,心筋梗塞,心房細動で抗凝固薬を内服している.

生活歴:会社勤務を定年退職していた.喫煙歴40年あるが,10年前から禁煙.飲酒歴なし.

家族歴:特記すべきことはない.

身体所見:意識は清明.身長165cm,体重60kg,体温36.8℃,血圧145/95mmHg,脈拍90回/分(不整あり),呼吸数20回/分,SpO2 100%(酸素3L),呼吸苦なし.対光反射正常で瞳孔不同なし.右への共同偏視あり.左半身麻痺〔徒手筋力テスト(MMT):上肢2/5,下肢3/5〕.心雑音なし.胸痛なし.

【問題点の描出】

突然発症した意識障害を伴わない左半身麻痺.心房細動の既往歴があり抗凝固薬を内服している.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

・心原性脳塞栓

・アテローム血栓性脳梗塞

・脳出血

頻度の高い疾患

・ラクナ脳梗塞

・Trousseau(トルソー)症候群

・大動脈解離

この時点で何を考えるか?

医療面接と身体診察を総合して考える点

 突然の片麻痺で発症している患者では脳梗塞脳出血の可能性が非常に高い.どちらも救命処置にかかわる疾患であるので迅速な診断が必要である.意識障害を伴わない片麻痺は脳梗塞の可能性のほうが高く,心房細動の患者では心原性脳塞栓を第一に考える.脳出血でも小さい出血が錐体路に起きれば意識障害を伴わないことがあり,抗凝固薬を内服しているので脳出血のリスクは高い.

 脳梗塞の場合には急性期には血圧は下げないが,脳出血の場合には再出血予防のため降圧が必要となり,鑑別は急を要する.

 脳主幹動脈急性閉塞による脳梗塞は急性期治療の対象となるので,迅速な診断が予後を左右する.

 意識障害があれば救命のための外科治療の適応となる脳出血を考える.意識清明で局所神経症

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