診療支援
診断

下腹部痛(妊娠初期)
28歳 女性
吉田 梨恵
(東京医科大学茨城医療センター産婦人科)
藤村 正樹
(東京医科大学茨城医療センター産婦人科 教授)

現病歴:月経が予定より1週間以上遅れていることから市販の妊娠検査薬を使用し陽性となった.まだ産婦人科は受診していない.本日,軽度の下腹部痛が出現したことより受診した.本日は最終月経から6週が経過する.

既往歴:特記すべきことなし.

生活歴:特記すべきことなし.

家族歴:特記すべきことなし.

月経歴:初経12歳,月経周期30日,順調.

身体所見:意識は清明.身長165cm,体重60kg,体温36.5℃,脈拍85回/分(整),血圧126/84mmHg,呼吸数15回/分,SpO2 99%(room air).心音,呼吸音に異常なし.腹部は平坦・軟である.腹部正中に軽度の下腹部痛を認める.腰背部痛は認めない.性器出血は認めない.

【問題点の描出】

健康な女性,妊娠反応陽性であるが産婦人科で妊娠の確認を受けていない段階での下腹部痛.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

・異所性妊娠

・卵巣腫瘍合併妊娠

・虫垂炎

・尿路疾患(膀胱炎,尿路結石など)

頻度の高い疾患

・流産・切迫流産

この時点で何を考えるか?

医療面接と身体診察を総合して考える点

 妊娠反応陽性で下腹部痛を訴える場合,原因として〈p〉産科疾患(流産など)と,なんらかの疾患の合併(虫垂炎など)の双方を考慮する必要がある.最も頻度が高いのは流産に関連した状況であるが,身体診察や医療面接で下腹部痛を示す疾患を可能なかぎり除外することが重要である.

 なお,〈p〉流産や異所性妊娠では性器出血や腹腔内出血により血圧低下などショック症状を呈することもあるため,バイタルサインや症状の変化に注意して診察,検査を進める

 この患者では軽度の疼痛を下腹部正中に認めるも,現時点で〈除〉発熱などのバイタルサインに異常はなく,また尿路疾患を疑う背部痛などを認めないため以下の疾患を考慮した.

診断仮説(仮の診断)

流産

異所性妊娠

・卵巣腫瘍合併妊娠

必要なスクリーニング検査

‍ 〈p〉

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?