診療支援
診断

悪寒,発熱
32歳 女性
横田 恭子
(香川大学医学部附属病院感染症教育センター センター長)

現病歴:最近多忙であった.昨日から頻尿が出現し,朝から悪寒が出現,改善せず全身倦怠感も強くなったため,夜間救急を受診.

既往歴:特記すべきことはない.

生活歴:1人暮らし,事務職.喫煙歴なし.飲酒は機会飲酒(1回にビール350mL).

家族歴:特記すべきことはない.

身体所見:意識は清明.身長160cm,体重58kg,体温39.1℃,血圧110/70mmHg,脈拍110/分,呼吸回数24回/分,SpO2 98%(room air).頭頸部に異常なく,甲状腺も触知しない.関節の腫脹なし.体表に外傷なし.リンパ節腫脹なし.心音,呼吸音ともに異常なし.腹部は平坦・軟で,肝・脾を触知しない.肋骨脊柱角(CVA)叩打痛なし.項部硬直なし.

【問題点の描出】

生来健康な30歳代女性に突然生じた発熱である.頻尿が先行している.全身状態は良好であるが,やや呼吸回数が多く,全身倦怠感は朝からは進行している印象である.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

・重症感染症

・敗血症を伴う重症感染症(腎盂腎炎を含む)

・外科的介入の必要な腹腔内感染症

頻度の高い疾患

・腎盂腎炎

・性器ヘルペス

・骨盤内炎症性疾患

この時点で何を考えるか?

医療面接と身体診察を総合して考える点

 生来健康な女性に突然に生じた発熱である.頻尿が先行しており,尿路感染をまずは考える.印象として全身倦怠感は強い.qSOFA scoreでは1点であるが〔症候・病態編「急性感染症」の表4参照〕,進行する可能性があり注意を要する.

 頻尿があるため,腎盂腎炎をまずは考えるが,頻尿はほかの原因でも出現する.この時点での鑑別は以下のとおりである.

 ①腎盂腎炎,②頻尿,排尿痛をきたす感染性疾患(頸管炎,骨盤内炎症性疾患,腹腔内感染,性器ヘルペスなど),③若年者なので考えにくいが,ほかの感染症に膀胱炎を合併している可能性もありうるので,そこも頭の隅においておく.

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?