診療支援
診断

左殿部から下肢にかけての疼痛
65歳 女性
清水 敦
(自治医科大学緩和ケア・消化器一般移植外科 教授)

現病歴:前医にて直腸癌内視鏡的切除6年後,経過観察のCTで骨盤内腫瘍を指摘された.子宮癌を疑われ当院に紹介されたが精査の結果,直腸癌再発と診断された.切除不能であり,S状結腸人工肛門造設のうえ薬物療法・放射線療法が施行された.その後も薬物治療が継続されるなか左殿部から膝窩にかけて下肢背面の疼痛が生じた.

既往歴:44歳時に腰椎すべり症に対し前方固定術,64歳時に高血圧.

生活歴:主婦.喫煙歴なし.機会飲酒.

家族歴:父親:くも膜下出血,母親:大腸癌,脳梗塞.

身体所見:意識は清明.身長147cm,体重42kg,脈拍60回/分(整),血圧96/52mmHg,体温37.0℃,呼吸数16回/分,SpO2 97%(room air).眼瞼結膜は貧血様.黄疸なし.頸部リンパ節を触知しない.心音,呼吸音に異常なし.腹部は平坦・軟で圧痛なし.腸蠕動音異常なし.左下腹部にストマを認める.左殿部から膝窩にかけて下肢背面の「ピリピリする」自発痛あり.痛みのため下肢挙上テストは施行できず.

【問題点の描出】

直腸癌に対する内視鏡的切除術の6年後に骨盤内再発を認めた65歳女性.治療経過中に左殿部から下肢にかけて坐骨神経痛様の疼痛を認めた.

診断の進め方

特に見逃してはいけない疾患

・腫瘍性病変

頻度の高い疾患

・椎間板ヘルニア

・脊椎すべり症

・脊柱管狭窄症

この時点で何を考えるか?

医療面接と身体診察を総合して考える点

 下肢背面の「ピリピリとした」疼痛であり,神経障害性疼痛を想起する〔症候・病態編「終末期の諸症状」参照〕.疼痛の部位・性状は坐骨神経痛様である.下肢の筋力・知覚のほか,下肢挙上テストなどの身体診察が重要であるが,疼痛が強いときは診察に難渋することも多い.

 坐骨神経痛の原因疾患として頻度が高いのは椎間板ヘルニア脊椎すべり症脊柱管狭窄症などである.今回の患者の場合,腰椎すべり症に対し前方固定術の既往があり,そ

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