診療支援
治療

13ブロムワレリル尿素
上條 吉人
(北里大学特任教授・中毒・心身総合救急医学)

最初の10分メモ

含有する製品

・処方薬:ブロムワレリル尿素(ブロバリン®,ブロムワレリル尿素®,ブロモバレリル尿素®)

・OTC薬:ブロムワレリル尿素〔ウット®(1錠中83mg)〕


診断のポイント

・精神障害の病歴またはブロムワレリル尿素の服用歴のある患者に,傾眠,昏睡,呼吸抑制,頻脈などを認める.

・臭素はX線の透過性が低いため,胃内にX線不透過像を認める(図1).

・血中濃度が高値である(>50μg/mL).


治療のポイント

・呼吸抑制・呼吸停止には速やかに気管挿管および人工呼吸器管理を施行.

・尿量を維持して臭素イオンの排泄を促す.

・低血圧などが難治性であれば,血液灌流法または血液透析法を考慮.


Do&Don't

・胃内にX線不透過像を認めたら,ブロムワレリル尿素中毒を疑う.

・症状の持続または腹部X線にて胃内の薬物塊が疑われたら内視鏡を施行.


概説

 ブロムワレリル尿素は,催眠・鎮静薬として処方または市販されている.また,解熱・鎮痛薬,鎮暈薬などの成分として多くのOTC薬に配合されている.近年では,催眠・鎮静薬は,有効かつ安全なベンゾジアゼピン類に置換され,ブロムワレリル尿素の処方量は激減した(化学構造:図2).


薬物動態

分布容積が小さく,蛋白結合率が低い過量服薬では半減期が延長するので,血液灌流法または血液透析法が有効な可能性がある.

・大部分は肝臓で速やかに代謝されて,代謝物を産生するとともに臭素イオン(Br)を遊離する.

・代謝物およびBrは尿中に排泄される.

・酸性胃液中で薬物塊を形成することがある.


毒性のメカニズム

・遊離された臭素イオンは中枢神経に移行し,塩素イオンと置換されて,中枢神経抑制作用および心筋抑制作用を発揮する.

・血中濃度が上昇するほど中毒症状は重症となる.

  中毒域:50μg/mL以上

  致死域:100μg/mL以上


症状

・中枢神経抑制作用により,傾眠,昏睡,呼吸抑

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