診療支援
治療

19メタンフェタミン,メチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA)
上條 吉人
(北里大学特任教授・中毒・心身総合救急医学)

最初の10分メモ

含有する製品

・メタンフェタミン(ヒロポン®,ポン,エス(S),ヤク,やせ薬,スピード(Speed),シャブ,アイス(Ice),メス(Meth)など)

・メチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA)〔エクスタシー(Ecstasy or XTC),エックス,バツ,タマ,アダムなど〕


診断のポイント

・メタンフェタミンまたはMDMAの使用歴がある,または,使用を疑わせる所見(注射痕など)がある.

・多弁,不穏・興奮などの中枢神経興奮症状,発汗,高血圧,頻脈などの交感神経興奮症状,および,高体温を認める.

・歯ぎしり(bruxism)または顎硬直(jaw clenching)があればMDMAの摂取を疑う.

・若い患者に頭蓋内出血または心筋梗塞を認めれば,メタンフェタミンまたはMDMA中毒も疑う.

・鑑別診断にはTriage® DOAが役立ち,AMP(アンフェタミン類)が陽性となる.


治療のポイント

・中枢神経興奮症状,交感神経興奮症状,高体温には,ミダゾラムなどのベンゾジアゼピン系薬物を投与.

・幻覚・妄想を伴う不穏・興奮,または,舞踏病アテトーシス様運動にはハロペリドールを静注.


Do&Don't

・頭蓋内出血,心筋梗塞,急性大動脈解離,肝障害,横紋筋融解症などの重篤な身体合併症を見逃さないように注意する.

・尿の酸性化はミオグロビン尿による腎毒性を増強させる可能性があるので施行しない.


概説

 メタンフェタミンは,日本ではヒロポン®という商品名で1941(昭和16)年に市販され,日本軍の士気高揚,疲労感の除去などのために用いられた.ところが,戦後に大流行した際に,薬物依存やアンフェタミン精神病などの問題が明らかになり,1951(昭和26)年に覚せい剤取締法が制定されてからは,一部の限定的な医療用途での使用を除いて,一切の所持・使用が禁じられた.

 メチレンジオキシメタンフェタミン(3,

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