診療支援
治療

23大麻
上條 吉人
(北里大学特任教授・中毒・心身総合救急医学)

最初の10分メモ

含有する製品

・大麻(マリファナ,ハシッシュ,ハッパ,グラス,チョコ,など)


診断のポイント

・大麻の使用歴があるまたは使用を疑わせる所見がある患者に,陶酔感,多幸感,パニック発作,不安などの精神症状,および,洞性頻脈を認める.

・鑑別診断にはTriage® DOAが役立ち,THC(大麻)が陽性となる.

・機会摂取者では,摂取から数日~1週間後までΔ9-THCの尿中代謝物である11-nor-Δ9-THC-COOHは陽性反応を示す.

・常用者では,脂肪組織に蓄積されたΔ9-THCが再び血流中に遊離するので,最終摂取から21~30日後までΔ9-THCの尿中代謝物である11-nor-Δ9-THC-COOHは陽性反応を示す.


治療のポイント

・精神的に苦痛があっても,たいていは言語的介入によって安心させるだけで十分である.


Do&Don't

・大麻の摂取が統合失調症の発症や増悪を促進する可能性があるので注意する.

・大麻の診断には通常尿が用いられるので,大麻の使用が疑われれば尿を保存する.


概説

 大麻は,中央アジア原産でアサ科の一年草本である大麻草(Cannabis sativa),および,その有効成分を摂取するために加工したものの総称で,全世界でもっとも乱用されている薬物の1つである.大麻の使用法としては,細かく刻んだ乾燥大麻草をタバコのように紙に巻いて吸煙する方法,および,粉末状にした樹脂または液状大麻をタバコに混ぜて吸煙する方法が一般的である.大麻は,約60種のカンナビノイド(cannabinoids)と総称されている特有な成分を含有している.なかでも,デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(delta-9-tetrahydrocannabinol;Δ9-THC)は,薬理活性が圧倒的に高い.大麻の身体依存や精神依存は他の乱用薬物より弱い.大麻は大麻取締法で,化学合成されたΔ9-THC

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