診療支援
治療

25カーバメート
上條 吉人
(北里大学特任教授・中毒・心身総合救急医学)

最初の10分メモ

含有する製品

■殺虫剤

・アラニカルブ(オリオン®,ランブリン®)

・オキサミル(バイデート®)

・カルボスルファン(アドバンテージ®,ガゼット®)

・チオジカルブ(ラービン®)

・ベンフラカルブ(オンコル®)

・メソミル(ランネート®)

・BPMC(バッサ®)

・MIPC(ミプシン®)

・NAC(セビモール®,セビン®,デナポン®,ナック®,ミクロデナポン®)

■医薬品

・ジスチグミン臭化物(ウブレチド®)

・ネオスチグミン(ワゴスチグミン®)

・ピリドスチグミン臭化物(メスチノン®)


診断のポイント

・カーバメートへの曝露歴または曝露が生じる状況がある患者に,縮瞳などのムスカリン様症状または筋線維束攣縮などのニコチン様症状を認める.

・赤血球AChE値または血清コリンエステラーゼ(ChE)が低値であることがある.


治療のポイント

・気道分泌物の増加または気管支攣縮による喘鳴には,アトロピン硫酸塩の静注を繰り返す.


Do&Don't

・カーバメート中毒ではAChEなどの活性は急速に回復するので,赤血球AChE値または血清ChE値が正常であっても,カーバメート中毒を否定しない.

・AChEは自然回復するのでAChEの再活性薬(reactivator)であるプラリドキシムヨウ化物(PAM)は投与しない.


概説

 可逆的アセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害薬であるカーバメート(カルバミン酸塩)は,殺虫剤として全世界で使用されている.また,排尿障害などの治療薬としても使用されている(基本構造:図1,代表的なものの化学構造:図2).


薬物動態

・血液・脳関門の通過は不良である→中枢神経症状は少ない.

・ほとんどの薬物は,肝臓で水酸化,加水分解,または,抱合されて,数日以内に尿中に排泄される.


毒性のメカニズム

・図3に示すように,AChEはアセチルコリン(ACh)をコリンと酢酸に加水分解するが,カー

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?