診療支援
治療

29アニリン系除草剤
上條 吉人
(北里大学特任教授・中毒・心身総合救急医学)

最初の10分メモ

含有する製品

・アラクロール(ラッソー®)

・フェンメディファム(ベタナール®)

・ブタクロール(マーシェット®)

・プレチラクロール(エリジャン®,ソルネット®)

・メトラクロール(デュアール®)

・メフェナセット(ヒノクロア®)

・リニュロン(ロロックス®)

・DCMU(カーメックスD®,クサウロン®,ジウロン®,ダイロン®)

・IPC(クロロIPC®)


診断のポイント

・アニリン系除草剤の曝露歴または曝露を生じる状況がある患者に悪心・嘔吐などの消化器症状またはメトヘモグロビン血症を認める.


治療のポイント

・溶血があれば,ハプトグロビンを投与.

・メトヘモグロビン濃度>30%であれば,メチレンブルーを静注.


Do&Don't

・メトヘモグロビン血症があるとSpO2はSaO2より低値となることに注意する.


体重50kgの実践投与量

メチレンブルーの投与:メトヘモグロビン濃度>30%であれば,1%メチレンブルー溶液5~10mL(50~100mg)を5分以上かけて静注.


概説

 アニリン系除草剤のほとんどは,土壌処理剤として用いられている(代表的なものの化学構造:図1).


薬物動態

・アニリン系除草剤のヒトでの毒物動態は不明な点が多い.

・生体内で加水分解されて酸化作用のあるアニリン誘導体に変換される.


毒性のメカニズム

・生体内では,ヘモグロビンのFe2+が自己酸化(auto-oxidation)してFe3+になることによって,常にヘモグロビンからメトヘモグロビンが産生されているが,メトヘモグロビンをヘモグロビンに還元する過程を,NADH-メトヘモグロビン還元酵素やNADPH-メトヘモグロビン還元酵素などが触媒して,メトヘモグロビン濃度を1%未満に維持している.

・アニリン系除草剤の代謝産物であるアニリン誘導体は酸化作用をもち,ヘモグロビンのFe2+を酸化してFe3+として,ヘモグロビンからメトヘモグ

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