診療支援
治療

35フェノール,クレゾール
上條 吉人
(北里大学特任教授・中毒・心身総合救急医学)

最初の10分メモ

含有する製品

・フェノールを含む製品には,液状フェノール®(88.8%以上),歯科用フェノール・カンフル®(35%),フェノール・亜鉛華リニメント®(2%程度)などがある.

・クレゾールを含む製品には,50%クレゾール石鹸液®(50%前後)などがある.50%クレゾール石鹸液にはメタ(m-)およびパラ(p-)クレゾールがおよそ2:1の比率で含まれている.


診断のポイント

・フェノールまたはクレゾールへの曝露歴または曝露が生じる状況がある患者に,腹痛などの消化器症状,および,昏睡,呼吸抑制・呼吸停止などの中枢神経抑制症状を認める.

・患者に,特有な臭気を認める.

・灰色または暗色尿を認める.


治療のポイント

・昏睡,呼吸抑制・呼吸停止には気管挿管および人工呼吸器管理を施行.

・経口摂取では牛乳または水で希釈し,消化器症状があれば内視鏡を施行.


Do&Don't

・経口摂取後に急速に出現する昏睡,呼吸抑制・呼吸停止などの中枢神経抑制に注意.

・フェノールやクレゾールには腐食作用があるので,胃洗浄は禁忌.


体重50kgの実践投与量

メチレンブルーの投与:メトヘモグロビン濃度>30%であれば,1%メチレンブルー溶液5~10mL(50~100mg)を5分以上かけて静注する.


概説

 フェノールおよびクレゾールは,コールタールの蒸留・精製や,化学合成によって得られる芳香族化合物で,特有の臭気がある.いずれも蛋白質を変性させて強い殺菌・消毒作用を発揮する(化学構造:図1).


薬物動態

・フェノールおよびクレゾールは,未変化体のまま尿中に排泄されるか,肝臓でグルクロン酸または硫酸抱合されて尿中に排泄されるか,チトクロームP450酵素系により代謝される.


毒性のメカニズム

・フェノールおよびクレゾールは,組織に浸透して,細胞の蛋白変性作用により細胞毒性を発揮する.

・フェノールおよびクレゾールは,速やかに消化管

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