診療支援
治療

38鉄化合物
上條 吉人
(北里大学特任教授・中毒・心身総合救急医学)

最初の10分メモ

含有する製品

・硫酸鉄水和物(徐放剤:フェロ・グラデュメット®,スローフィー®,テツクール®

・フマル酸第一鉄(フェルム®)

・クエン酸第一鉄ナトリウム(フェロミア®)

・溶性ピロリン酸第二鉄(インクレミン®)


診断のポイント

・貧血の病歴または鉄化合物の服用歴のある患者に,嘔吐,下痢,腹痛などの消化器症状,鉄化合物による黒色便などを認める.

・腹部X線で消化管内のX線不透過像を認める.

・血清鉄濃度の高値を認める.

・表1に血清鉄濃度と重症度を示す.経口摂取後4~6時間の血清鉄濃度の測定は重症度の評価にとって重要である.総鉄結合能は,300~450μg/dLであるので,血清鉄濃度<350μg/dLでは軽症である.


治療のポイント

・徐放剤の大量服用,または,腹部X線で消化管内にX線不透過像を認めれば腸洗浄を考慮.

・腹部X線または腹部CTで胃内に薬物塊の形成を認めれば内視鏡または外科的胃切開による除去を考慮.

・心原性ショック,重度の代謝性アシドーシスなどの重篤な症状を認める,または,血清鉄濃度が500~600μg/dL以上であれば,デフェロキサミンメシル酸塩(デスフェラール®注)を10~15mg/kg/時で持続静注.


Do&Don't

・大量服用であれば,無症状であっても最低6時間は入院させて注意深く観察.

・血清鉄濃度を適宜チェック.特に,摂取後4~6時間および8~12時間の血清鉄濃度を測定し,徐放剤または胃内での薬物塊の形成による吸収の遅延の有無を評価.

・鉄化合物は,活性炭に吸着されないので,活性炭は投与しない.

・デフェロキサミン投与中は,尿の色を適宜チェック.


体重50kgの実践投与量

デフェロキサミンメシル酸塩(デスフェラール®注)の投与:心原性ショック,重度の代謝性アシドーシス,血清鉄濃度が500~600μg/dL以上であれば,デフェロキサミンメシル酸塩(デス

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