診療支援
治療

46水溶性の低い刺激性ガス
上條 吉人
(北里大学特任教授・中毒・心身総合救急医学)

最初の10分メモ

発生する状況

■窒素酸化物

・自然界では,土壌微生物によって発生する.また,自動車,工場,燃焼施設などから排出される.二酸化硫黄とならぶ大気汚染物質で,光化学スモッグや酸性雨の原因となる.

■ホスゲン

・自然界には存在しない.ポリウレタンなどの合成樹脂やイソシアネートなどの化学物質の原料として広く化学工業で用いられている.また,四塩化炭素,トリクロロエチレンや塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素類,フロン類などの加熱によって発生する.


診断のポイント

・現場に窒素酸化物,ホスゲンの発生源があり,同じ現場にいた人およびペットに下気道症状を認める.


治療のポイント

・ALI/ARDSには気管挿管および人工呼吸器管理を施行し,酸素化に応じて呼気終末期陽圧(PEEP)を調節.

・メトヘモグロビン濃度>30%であれば,メチレンブルーを静注.


Do&Don't

・症状のある患者は,曝露後に最低24時間は入院として,パルスオキシメータなどによって呼吸状態を持続モニター.

・高齢者,および,気管支喘息またはCOPDの患者は重症になりやすいので注意.


概説

一酸化窒素(NO),二酸化窒素(NO2

 NOは無色,無臭の気体で,水には溶けにくい.沸点は,-151.7℃である.生体内でも産生されて強い血管拡張作用を発揮する.下記の化学反応式のように,酸素に触れると,ただちに酸化されてNO2となる.

  2NO+O2→2NO2

 NO2は,赤褐色の,刺激臭のある液体または気体で,水には溶けにくい.沸点は,21.2℃である.気体は空気より重い.強い酸化作用をもち窒素酸化物のなかで最も毒性が強い.

ホスゲン

 ホルムアルデヒドの水素原子を塩素原子で置換した化学構造をもち,二塩化カルボニルとも呼ばれている.無色透明の,液体または気体で,水には溶けにくい.気体は,低濃度では刈り取ったばかりの干し草臭(freshly mo

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?