診療支援
治療

【1】息切れ,呼吸困難
dyspnea
山中 克郎
(福島県立医科大学会津医療センター・総合内科教授)

症候を診るポイント

●状態が安定していない患者には,迅速に酸素を投与しなければならない.

●気管支喘息,うっ血性心不全,虚血性心疾患,COPD,間質性肺炎,肺炎,精神疾患が呼吸不全の85%の原因となっている.

●詳細な問診と基本的身体所見から,呼吸困難の原因をかなり絞り込むことができる.

▼定義

 呼吸困難とは主観的に感じる息苦しさのことであり,急性(数時間から数日)および慢性(1か月以上)に発症する.

▼病態生理

 脳や血管にある化学受容体,胸壁や横隔膜にある機械受容体,肺の迷走神経受容体が呼吸を調整している.中枢からの呼吸に対する命令と呼吸機能の反応にアンバランスが生じると呼吸困難を起こす.低酸素血症を伴うことが多いが,低酸素血症を起こさなくても,過呼吸発作,パニック発作,疼痛,代謝性アシドーシス,アスピリン中毒では息苦しさを訴えることがある.

 低酸素血症の原因として,ventilation-perfusion(V/Q)ミスマッチ,肺胞低換気,右左シャント,吸気酸素分圧の低下,拡散障害がある.V/Qミスマッチが95%以上の低酸素血症の原因である.肺炎,慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD),気管支喘息,気胸,無気肺,心不全が代表的な疾患である.呼吸中枢の抑制や呼吸筋麻痺,上気道閉塞では肺胞低換気が起こる.

 右左シャントは先天性心疾患やV/Qミスマッチを起こすすべての疾患でV/Qミスマッチがひどくなると生じる.吸気酸素分圧の低下の原因には登山や酸素投与量の低下がある.拡散障害は間質性肺炎,肺気腫,ニューモシスチス肺炎で起こる.

 気管支喘息,うっ血性心不全,虚血性心疾患,COPD,間質性肺炎,肺炎,精神疾患が呼吸不全の85%の原因となっている.約1/3の患者では,いくつかの原因により呼吸困難を起こしている.急性の呼吸困難の

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