症候を診るポイント
●胸焼けの原因として頻度が高いものはGERDであるが,急性発症の場合は急性冠症候群の見逃しに要注意.
●レッドフラッグサインの確認を怠らず,悪性腫瘍の見逃しを回避する.
●治療として非薬物療法の指導を怠らないこと,H2RAやPPIの漫然投与を控えることが重要.
▼定義
胸焼けとは,胸部(胸骨の後面あたり)の焼けるような違和感・痛みのこと.胃食道逆流症(gastroesophageal reflux disease:GERD)は胸焼けの最も多い原因であり,胸焼け以外に胸痛,呑酸(口腔内まで胃酸が逆流し酸っぱいと感じること),げっぷ(胃内の空気が口腔外へと逆流,排出すること)などの症状を引き起こす.
一方,GERDが胸焼けの原因のすべてではないことに注意が必要である.
▼病態生理
胸焼けの主たる原因であるGERDについて述べる〔詳細は第4章「胃食道逆流症」の項(→)を参照〕.GERDは,症状誘発因子(逆流現象,酸曝露,食道の過敏状態)と防御因子(食道粘膜の状態,食道内の酸クリアランス)のバランスで生じる.
逆流現象の大半は,一過性下部食道括約筋弛緩(transient lower esophageal sphincter relaxation:TLESR),すなわち食後数時間の下部食道括約筋(LES)の弛緩により,げっぷとともに生じる.しかしそのほとんどは生理的逆流であり,無症状である場合が多い.多くは食後数時間のみに生じ,夜間睡眠中には生じない.一方,病的逆流は,症状や粘膜障害を生じ,しばしば夜間睡眠中にも生じる.
TLESR以外に,LES圧低下,食道裂孔ヘルニア(50歳以上,肥満,妊婦などがリスク)などが逆流現象の原因となる.
▼初期対応
病歴,全身状態の外観(general appearance),バイタルサインなどから,緊急性・重症度の高い疾患を鑑別する.急性発
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