診療支援
治療

(3)腫瘍随伴症候群
副島 研造
(慶應義塾大学教授・臨床研究推進センター)

 発生機序は明らかにされていないものもあるが,腫瘍が異所性に産生する生理活性物質によって二次的に発生したり,腫瘍を標的とした抗体がほかの組織と交差反応した結果として発生したりする機序が考えられている.癌患者の最大20%で腫瘍随伴症候群がみられるとされるが,癌腫のなかでは肺癌が最も頻度が高く,肺癌の10~20%に合併するといわれ,特に肺小細胞癌に高頻度に認められる.肺癌に合併する主な腫瘍随伴症候群を表2-56に示す.原因不明の発熱,神経症状(しびれ,筋力低下,意識障害など),筋肉痛や関節痛などが癌の存在診断につながることもあり,この症候群を常に意識しておくことが重要である.

 腫瘍随伴症候群の治療については,腫瘍から異所性に産生される生理活性物質が原因となっている腫瘍随伴内分泌症候群などの場合,肺癌そのものに対する治療,すなわち手術,放射線や化学療法により症状の改善が認められるとする報告も多いが,高カルシウム血症は,高度の場合致死的となりうるため,oncologic emergencyとしての対応を考慮する.一方,自己抗体が関与するとされる腫瘍随伴神経症候群や皮膚筋炎などでは,原病の治療を行っても症状の改善に乏しいことが多く,免疫反応を抑制するため,ステロイド,免疫抑制薬,免疫グロブリン大量療法,血漿交換やリツキシマブの投与なども考慮される.

トピックス

【高カルシウム血症】

 肺癌においては扁平上皮癌でみられることが多く,異所性副甲状腺ホルモン関連蛋白(parathyroid hormone-related protein:PTHrP)産生による骨吸収亢進と腎臓からのカルシウム再吸収亢進が原因の8~9割を占め,その他骨転移に伴う骨融解も原因となる.担癌患者では低アルブミン血症を呈することが多く,その際には補正カルシウム値(mg/dL)=実測カルシウム値(mg/dL)+〔4.0-

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