診療支援
治療

【3】転移性肺腫瘍
metastatic lung tumor
副島 研造
(慶應義塾大学教授・臨床研究推進センター)

疾患を疑うポイント

●肺の両側,肺底区優位に多発性の結節影を認めること.

●結節の形状が辺縁整で球形を呈していること.

●癌性リンパ管症では,辺縁不整な粗い気管支血管束の肥厚像を認めること.

学びのポイント

●癌の転移経路としては,血行性,リンパ行性および管腔性(気道性)があるが,多くは血行性であり,肺は血管床が豊富で,循環する腫瘍細胞が最初に接触するのが肺の毛細血管床であるため,多くの癌で肺への転移が多い.

●リンパ行性転移では,癌性リンパ管症を呈することがある.

●転移性肺腫瘍の画像所見としては,①多発ないし単発の肺結節,②癌性リンパ管症,③気管支内腔の結節,④胸水などがみられる.

●治療は原則として,原発腫瘍に有効とされる薬剤を用いた抗がん剤治療.

▼定義

 他臓器の原発巣から離脱して,脈管や気道を通じて肺に転移し,病巣を生じた腫瘍を転移性肺腫瘍とよぶ.腫瘍としての生物学的特徴は原発臓器の特徴を受け継いでおり,予後を規定する.

▼病態

 転移の経路としては,血行性,リンパ行性および管腔性(気道性)があるが,最も多いのは血行性で,リンパ行性,管腔性の転移は少ない.血行性転移は,原発巣から離脱した腫瘍細胞が脈管内に侵入し,肺動脈を経由して肺の毛細血管に到達し,血管壁への着床,続いて管壁と基底膜を分解して血管外の組織への浸潤,増殖の過程を経て病変を形成したものである.肺は血管床が豊富で,循環する腫瘍細胞が最初に接触するのが肺の毛細血管床であることが肺に転移が多い理由である.リンパ行性の転移の機序としては2通りあるが,1つは肺の毛細血管への血行性播種に続いて,隣接する間質やリンパ系に浸潤した後,リンパ流を介して肺門や縦隔リンパ節へ転移するもので大半を占める.もう1つはリンパ管に沿って逆行性に進展するもので,腫瘍は胸郭外から縦隔リンパ節に転移して,その後肺門や気管支肺リンパ節に逆行性に拡がり,最終的に

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