▼徐脈性不整脈と頻脈性不整脈
徐脈性不整脈は,洞結節・房室結節の線維化や変性などの組織学的な異常によって起こる.サルコイドーシスなどの代謝性疾患もこれらの特殊刺激伝導系に病変が及ぶと徐脈性不整脈を生じる.それ以外にも,遺伝子の異常,電解質異常,薬物の影響,他臓器の疾患(甲状腺機能低下症など)が原因で起こる場合がある.
頻脈性不整脈・期外収縮の発生機序は,大きく次の3つに分類される.
●異常自動能の亢進
●トリガードアクティビティ
●リエントリー
▼異常自動能の亢進
特殊刺激伝導系は,洞結節からPurkinje線維に至るまで自動能を有している.この自動能にはヒエラルキーがあり,正常では洞結節の自動能が最も高く,このため洞調律となる.このヒエラルキーが崩れる2つのパターンがある.1つは,徐脈不整脈の洞結節の自動能が低下した洞不全症候群である.もう1つは,下位の自動能が異常に亢進したり,通常は自動能をもたない心房筋・心室筋が病態下で自動的に興奮することで頻脈性不整脈の原因となる.後者を異常自動能の亢進という.異常自動能の亢進は,主に頻拍(心房頻拍,心室頻拍)の原因となる.この誘因には,心筋の虚血,電解質異常などがある.
▼トリガードアクティビティ(撃発活動)
活動電位の立ち上がりの脱分極(第0相)と次の活動電位の立ち上がりの脱分極(第0相)の間に起こる脱分極を,後脱分極(afterdepolarization)とよぶ.後脱分極が活動電位の閾膜電位に達して活動電位を発生したものを,トリガードアクティビティという.不整脈のなかでも期外収縮の原因となることが多いが,頻拍の原因となることもある.
後脱分極には,活動電位が終了する前の早期に起こる早期後脱分極(early afterdepolarization:EAD)と,活動電位が終了した後に遅れて起こる遅延後脱分極(delayed afterde