診療支援
治療

2 三尖弁閉鎖不全症
tricuspid regurgitation(TR)
奥田 真一
(山口大学大学院・器官病態内科学)
矢野 雅文
(山口大学大学院教授・器官病態内科学)

▼定義

 三尖弁閉鎖不全症(TR)の原因には,三尖弁自体の病変による器質的TRと,右室の圧・容量負荷による二次的な三尖弁接合不全に起因する機能性TRがある(表3-36).発生機序は,左心不全と肺高血圧の合併,あるいはどちらかに続発する右室の拡張または右心不全による機能性TRが一般的である.三尖弁は僧帽弁に比べ弁接合部の幅が狭く,左室と比較して右室は心室内圧が低く強固な閉鎖が必要ないため,軽度のTRは健常者にも高率にみられる.海外では麻薬常習者による三尖弁の感染性心内膜炎によるTRの頻度が高い.

▼病態生理

 収縮期に右室から右房へ血流が逆流し,右室・右房は容量負荷のため拡大する.二次的な三尖弁輪の拡大と右室拡大により逆流量が増加する.その結果,右房圧・静脈圧の上昇から右心不全症状が出現する.

▼臨床症状

 自覚症状では,右心不全症状が中心で,心窩部不快感や全身倦怠感が最も多い.

 身体所見では,頸静脈怒張や肝腫大がみられ,これらは収縮期に拍動を示す.聴診にて胸骨左縁第4~5肋間で吹鳴様の全収縮期雑音を聴取する.この雑音は吸気時に増強して呼気時に減弱することが特徴である〔Rivero-Carvallo(リヴェロ・カルヴァロ)徴候〕

▼検査

胸部X線

 右房・右室の拡大を反映し右第2弓が突出する.

心電図

 右室容量負荷のため不完全右脚ブロック,右軸偏位,右室肥大を示し,上室性不整脈や心房細動を合併することがある.

心エコー図

 カラードプラ法で収縮期に右室から右房への逆流を認める.右房・右室・下大静脈・肝静脈の大きさおよび下大静脈の呼吸性変動や心室中隔の奇異性運動の有無により,右心系容量負荷の重症度を評価し,三尖弁自体の器質的変化の有無とともに診断する(図3-79,80,81)

心臓カテーテル検査

 右房圧波形でv波は増大し,x谷消失とy波下降がみられる.平均右房圧は上昇し,10mmH

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