▼定義
三尖弁閉鎖不全症(TR)の原因には,三尖弁自体の病変による器質的TRと,右室の圧・容量負荷による二次的な三尖弁接合不全に起因する機能性TRがある(表3-36図).発生機序は,左心不全と肺高血圧の合併,あるいはどちらかに続発する右室の拡張または右心不全による機能性TRが一般的である.三尖弁は僧帽弁に比べ弁接合部の幅が狭く,左室と比較して右室は心室内圧が低く強固な閉鎖が必要ないため,軽度のTRは健常者にも高率にみられる.海外では麻薬常習者による三尖弁の感染性心内膜炎によるTRの頻度が高い.
▼病態生理
収縮期に右室から右房へ血流が逆流し,右室・右房は容量負荷のため拡大する.二次的な三尖弁輪の拡大と右室拡大により逆流量が増加する.その結果,右房圧・静脈圧の上昇から右心不全症状が出現する.
▼臨床症状
自覚症状では,右心不全症状が中心で,心窩部不快感や全身倦怠感が最も多い.
身体所見では,頸静