診療支援
治療

1 肺動脈閉鎖兼正常心室中隔(純型肺動脈閉鎖症)
pulmonary atresia and intact ventricular septum(PA/IVS)
石川 司朗
(福岡輝栄会病院・循環器内科)

▼定義

 二心室(右室,左室)を有し,かつ心室中隔欠損症(ventricular septal defect:VSD)を伴わない右室肺動脈間の閉鎖をいう(図3-88)

▼病態

 本疾患では右心房に還流した体静脈血は肺動脈弁を介して肺に還流できない.このため,心房間交通(PFO/ASD:右心房→左心房)が必須である.さらに,肺循環への血流維持に大動脈から動脈管を経由した血流が必須である(動脈管依存性心疾患).右室は低形成で,三尖弁は右室容量に相応するサイズが多く,異形成や低形成を合併する.しばしば,右室圧が左室圧を超える.右室と冠動脈間に類洞交通(図3-88c)を形成する例では,冠動脈血の酸素飽和度低下により心筋虚血(心室機能不全・房室弁閉鎖不全)を招くことがある.

▼疫学

 新生児心疾患の1~3%で,やや男児に多い.

▼診断

‍ 生後チアノーゼを呈する新生児に心エコー検査は必須である.右室と肺動脈の連続性(連絡)がなく,右室低形成もしくは三尖弁の低形成,異形成などを認めた場合,本疾患を疑う.胎児診断例も少なくない.適時,心臓カテーテル検査を検討する.

臨床症状

 初発症状はチアノーゼが多く,その程度は動脈管開存の程度に依存する.動脈管の狭小化にともない強い低酸素血症をきたす.

胸部X線

 肺血流減少と主肺動脈部分の陥凹を認める.三尖弁閉鎖不全の程度により右2弓が突出(右房拡大)するが,心拡大の程度は幅が広い.

心電図

 右房拡大,左室肥大所見を呈する.

心エコー

 診断確定に必須である.右室と肺動脈に連続性がなく,VSDがない症例は本症を疑う.心房間交通は右左短絡(右房→左房)を呈する.三尖弁閉鎖不全から右室圧が推定できる.右室心筋内にカラードプラによる血流信号を認める場合,類洞交通の存在を疑う.

心臓カテーテル検査

 右室収縮期圧が左室圧を凌駕することがある.心房間交通は必須で,狭いと両心

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