診療支援
治療

2 ファロー四徴症
tetralogy of Fallot(TOF)
石川 司朗
(福岡輝栄会病院・循環器内科)

▼定義

 ①肺動脈狭窄(右室流出路狭窄),②心室中隔欠損(ventricular septal defect:VSD),③大動脈騎乗(大動脈が心室中隔と整列しない),④右室肥大をもって四徴という(図3-92a).動脈血の酸素飽和度低下によりチアノーゼを呈し,その程度は肺動脈狭窄と動脈管開存の程度による.軽症例のVSD血流は左右短絡となりチアノーゼは目立たない(pink TOF,pink Fallotともいう).

▼疫学

 先天性心疾患の7~10%を占め,チアノーゼ性心疾患では最も多い.

▼病態

 右室流出路中隔が前方に偏位するため肺動脈狭窄(右室流出路狭窄)を発症し,筋性中隔と右室流出路中隔にずれ(不整合,malalignment)が生じ,VSDとなる.右室流出路狭窄のため肺動脈は低形成で,肺動脈弁狭窄も合併する.大きなVSDのため右室と左室は等圧で,典型例の大動脈血酸素飽和度は70~80%台に低下する.染色体異常〔Down(ダウン)症候群,22q11.2欠失〕との合併がある.

▼診断

臨床所見

 右室流出路狭窄由来の収縮期駆出性雑音が聴取される.狭窄の程度によりその性質は異なり,軽度狭窄では全収縮期雑音を,高度狭窄では収縮早期の短時間雑音となる.後述する低酸素発作時は弱く高調性で短くなり,完全な右室流出路閉鎖状態では雑音が消失する.チアノーゼの出現時期はさまざまで,動脈管開存がなく右室流出路狭窄が強ければ新生児期から生じる.生後3か月以降で早朝に啼泣や排便などを契機に急激なチアノーゼ発作を生じる場合があり,低酸素発作(hypoxic spell)や無酸素発作(anoxic spell)とよばれる.重度発作では代謝性アシドーシス,失神・けいれん,死に至ることもあり,予防にβ遮断薬の内服を行うが,外科と情報交換を密にし,すみやかに短絡術あるいは根治術を検討する.最近ではまれだが,1歳以降

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