診療支援
治療

1 エプスタイン病
Ebstein's anomaly
白石 公
(国立循環器病研究センター・教育推進部・部長)

▼定義

 三尖弁の中隔尖と後尖の付着部が大きく右心室側に偏位する結果,右心室の一部が右房化(図3-95a)し,高度の三尖弁閉鎖不全をきたす疾患.

▼病態

‍ 三尖弁の中隔尖と後尖が心室壁から分離できず癒着(plastering)し,付着部位が心尖方向に偏位する(図3-95c).右房化した右心室が形成され,高度の三尖弁閉鎖不全が主な病態となる.約90%に心房中隔欠損が合併し,肺動脈弁狭窄や閉鎖を合併することもある.線維輪の形成障害から副伝導路が遺残し,20~30%にWolf-Parkinson-White(WPW)症候群が合併する

▼疫学

 先天性心疾患の0.5%を占める.

▼診断

症状および理学的所見

 plasteringが強い症例では右心室からの駆出が低下し,新生児期から重篤な右心不全をきたす.一方で,軽症から中等例では成人期まで比較的に無症状に経過するが,年齢とともに,心房不整脈,右心不全,チアノーゼにより病状が悪化する.最終的には巨大な右房化右室により左室が圧排され,左心不全となる.

検査所見

1)胸部X線

 拡大した右心房により,右第2弓を主体とする心拡大がみられる.

2)心電図

 右軸偏位,右房負荷(V1で先鋭したP波),右室拡大による不完全右脚ブロックが特徴的であり,WPW症候群の合併も認められる.

3)断層心エコー

 中隔尖の偏位,拡大した右房化右室から診断可能である.

4)心臓カテーテル

 血行動態の評価と,電気生理学的検査を行う.

▼治療

新生児期乳児期の外科治療

 順行性肺血流が維持できない場合,三尖弁を閉鎖してBlalock-Taussig(ブラロック-タウシッヒ)短絡手術〔特論()参照〕を併設するStarnes(スターンズ)手術を行い,最終的にFontan(フォンタン)手術〔特論()参照〕により単心室血行動態に向かう.

年長児および成人期の治療

 NYHA(New York

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