診療支援
治療

(2)悪性腫瘍
河野 浩章
(長崎大学大学院准教授・循環器内科学)
前村 浩二
(長崎大学大学院教授・循環器内科学)

血管肉腫

 血管肉腫は,成人の原発性心臓肉腫のなかで最も多く,その30~37%を占める.腫瘍細胞の遺伝子解析ではp53遺伝子変異の頻度が多いと報告されている.右心系に生じることが多く,約90%は右房に発生する.初診時にすでに転移所見があるなど進行して診断されることが多く,予後は不良で平均生存期間は9~10か月である.転移は肺,肝,脳や骨に多い.有効な治療法は確立されていないが,多領域からのアプローチが提唱されており,集学的治療として,外科的切除,放射線治療,アジュバントやネオアジュバント化学療法やインターロイキン-12による免疫療法が含まれる.ドキソルビシンが生存率を改善したとの報告や,ネオアジュバント治療が腫瘍を縮小させ外科治療を可能にするなどの報告があるが,予後は依然として不良である.

横紋筋肉腫

 横紋筋肉腫は,小児で最も多い原発性心臓肉腫である.男児にやや多く,予後不良で平均生存期間は1年以下である.放射線治療や化学療法の効果も乏しく,根治は外科的切除であるが,高度に浸潤するため不可能であることが多い.

平滑筋肉腫

 平滑筋肉腫は,平滑筋に分化した悪性中胚葉性腫瘍であり,発症は平均40歳代であり,性差はなく,約70~80%は左房に発生し,肺動脈主幹部に進展する傾向がある.局所再発や遠隔転移が高頻度に生じ,進展が速く,診断後の平均生存期間は6か月である.有効な治療法がなく,症状が重症な場合にはQOL改善のための姑息的手術が考慮されることもある.

リンパ腫

 原発性心臓リンパ腫(primary cardiac lymphoma)は,全原発性心臓腫瘍の1.3~2%である.組織型は,びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B cell lymphoma:DLBCL)が約80%であり,そのほかに未分化大細胞型リンパ腫,Burkitt(バーキット)リンパ腫,T細胞

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