炎症性リウマチ性疾患と心臓血管系との関連性は古くから重要視されており,予後を規定する重要な因子との認識がある.全身性強皮症の肺動脈病変と肺高血圧,細小動脈を障害するANCA関連血管炎,血栓症を引き起こす抗リン脂質抗体症候群,心膜炎,心筋炎,弁膜症を引き起こす全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE),腎動脈狭窄,上下肢動脈の閉塞をきたす高安動脈炎や巨細胞性血管炎などがある.それぞれ分子レベルでの発症機序を明らかにする研究が進み,治療や進展予防に結びついてきている.
➊内皮障害と血管炎
関節リウマチの患者は女性に多いが,年齢マッチさせた健康女性と比較して,心筋梗塞に罹患する危険性が2倍高いといわれている.動脈硬化進展機序については不明なことが多いが,慢性炎症による炎症物質が血管内皮障害を引き起こし,インスリン抵抗性と脂質異常症など冠危険因子の増悪を招いて粥腫を進展させるのに貢献しているのではないかと考えられている.1つの懸念としてNSAIDs使用の関節リウマチ患者において,心筋梗塞の罹患率が上昇したとするエビデンスは幸いなことにない.しかし,胃腸障害や腎機能障害,血圧上昇や血栓イベントについては注意を要する.その他,TNF-α拮抗薬の使用は,炎症を強力に抑制し,内膜中膜複合体厚(intima-media thickness:IMT)の肥厚を抑制したとの報告がある.
動脈壁に浸潤する血管周囲炎や血管炎の組織学的特徴は,フィブリノイド壊死,血栓形成,線維化および瘢痕化である.フィブリノイド壊死は,中小血管の中膜に対する血管炎を特徴とし,狭窄,閉塞の結果として臓器虚血や血栓症,動脈瘤,出血をきたす.確定診断としての生検は病巣へのアクセス困難や危険性のため行いにくく,よって診断には臨床症状や血液検査,画像所見に委ねられることが多い.機序
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