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治療

1 舌癌,咽頭癌,口唇癌
tongue cancer,pharyngeal cancer,lip cancer
川野 真太郎
(九州大学病院・顎口腔外科講師)

▼定義

 舌癌は,舌前方2/3に発生する癌である.咽頭癌は,咽頭部に生じる癌で,軟口蓋や舌後方1/3もこれに含まれる.口唇癌は,上下口唇の赤唇部と唇交連に発生する癌をいう.

▼病態

 舌癌,咽頭癌,口唇癌の主な組織型は扁平上皮癌である.扁平上皮癌は,口腔および咽頭粘膜に存在する扁平上皮細胞に類似した腫瘍細胞が,基底膜を破壊し,腫瘍胞巣を形成しながら浸潤,増殖している.

 口腔・咽頭癌などの頭頸部癌発症の危険因子は,飲酒と喫煙である.また,舌癌では,齲歯の鋭縁や不適合な義歯による舌への慢性的な機械的刺激も誘因となる.上咽頭癌は,ほかの頭頸部癌に比べ比較的若年者に発症する傾向にあり,EB(Epstein-Barr)ウイルスの感染が発症に関与していることが報告されている.病理組織学的には低分化型扁平上皮癌と未分化癌が多い.中咽頭癌は,患者の50%以上にヒトパピローマウイルス(human papillomavirus:HPV)が検出されており,発症との関連が示唆されている.また,中・下咽頭癌では,食道に重複癌が多いことが知られている.口唇癌は,有色人種より白色人種に多いことから,メラニン色素の含有量や紫外線への曝露などが関与していると考えられている.

▼疫学

 わが国における頭頸部癌の発生頻度は,全がんの約5%であり,そのうち口腔癌が約40~50%で最も多く,ついで咽頭癌が約30~40%である.舌癌は口腔癌の約50~60%を占め,中高年の男性に多い.一方,口唇癌は口腔癌のなかで発生頻度が最も低く約1~2%であり,下唇に多い.

▼分類

 咽頭癌は,鼻腔と連続する上咽頭癌,舌後方1/3と軟口蓋を含む中咽頭癌,さらにその下方で喉頭の後ろに位置する下咽頭癌に分けられる.なお,下咽頭癌は,梨状陥凹,輪状後部,咽頭後壁の3亜部位よりなる.

▼診断

 びらん・潰瘍形成や病変周囲の硬結の有無により,比較的診断は容易で

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