診療支援
治療

1 食道アカラシア
esophageal achalasia
千葉 俊美
(岩手医科大学教授・関連医学分野)

▼定義

 食道アカラシアは下部食道括約筋(lower esophageal sphincter:LES)の弛緩不全と食道体部の蠕動運動障害により,液体,固形物の食道から胃への通過障害を呈する疾患である.

▼病態

 神経障害の原因は明らかでないが,筋層間神経叢〔Auerbach(アウエルバッハ)神経叢〕の神経節細胞変性や消失が認められている.

▼疫学

 発症年齢は成人に多くみられるが,小児から高齢者の幅広い年齢層にも認められ,男女差はない.発症率はおよそ1人/10万人/年程度である.

▼分類・診断

食道造影検査

 食道造影検査により得られる画像から,直線型,シグモイド型の拡張型に分類する.また,最大横径から拡張度をⅠ~Ⅲ度まで分類する.

食道内圧測定検査

1)食道内圧測定(食道アカラシア取扱い規約)

 不完全型,完全型の2種類に分類している.両型とも食道胃接合部の陰性波は消失し,不完全型は嚥下による食道陽性波が認められるが,完全型では認められない.

2)高解像度食道内圧検査(high resolution manometry:HRM)

 Chicago(シカゴ)分類によりアカラシアをtypeⅠ,Ⅱ,Ⅲの3つに分類している.いずれのtypeもIRP(integrated relaxation pressure,嚥下に伴う弛緩時の最低LES圧,正常値<15mmHg)が正常上限以上で,typeⅠでは嚥下による食道体部の蠕動波が認められず,typeⅡでは嚥下で蠕動波が認められないが30mmHg以上の均一な圧上昇を認め,typeⅢでは上部食道括約筋(upper esophageal sphincter:UES)弛緩からLES上端付近までの潜時(DL)の短縮したけいれんを認める(図4-4)

▼診断

食道アカラシアの症状

 食道内のつかえ感,酸味のない食道内の貯留物の口腔内逆流による咳嗽,突発的な嘔吐,胸痛など

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