診療支援
治療

1 食道静脈瘤,胃静脈瘤
esophageal varices,gastric varices
入澤 篤志
(獨協医科大学主任教授・内科学(消化器))

疾患を疑うポイント

●肝硬変患者の吐下血では,食道胃静脈瘤破裂を第一に考える.

学びのポイント

●食道胃静脈瘤の多くは,門脈圧亢進症による遠肝性側副血行路である.

●門脈圧亢進症の基礎疾患としては,肝硬変症が最も多い.

●治療には,内視鏡的治療,interventional radiology(IVR)治療,外科的治療がある.

▼定義

 門脈系は大循環系の静脈と連絡している部位がある.持続的な門脈圧亢進の状態に伴って,これらの生理的に存在する門脈-大循環系交通枝は径が拡大し,門脈から大循環への血流ルートとしての役割を担うようになる.食道胃静脈瘤はこの側副血行路の1つであり,食道・胃粘膜下層の静脈が拡張し,粘膜面が瘤状に隆起して観察される血管病変である.

▼病態

 食道胃静脈瘤の形成には,①門脈圧亢進に伴って発達した遠肝性側副血行路,②下部食道・胃噴門部領域における局所の循環亢進状態,の2つの病態が関与している.食道静脈瘤と胃噴門部静脈瘤に流入した血流はその多くは奇静脈を介して上大静脈に流出する.一方,胃穹窿部静脈瘤の形成には,門脈-大循環系短絡路の一部が胃静脈瘤として発現していることが多く,胃静脈瘤血流の多くは左腎静脈を介して大循環に流出する(下横隔静脈への流出症例もある).

 なお特殊なものとして,膵炎や膵癌などによる脾静脈閉塞が原因となり求肝性側副血行路が発達して出現する胃静脈瘤がある(左側門脈圧亢進症).

▼疫学

 食道胃静脈瘤の原因となる門脈圧亢進症をきたす主な基礎疾患は,種々の原因による肝硬変症(原発性胆汁性胆管炎を含む),特発性門脈圧亢進症,肝外門脈閉塞症,Budd-Chiari(バッド-キアリ)症候群の4つであり,このうち肝硬変が最多で門脈圧亢進症全体の約80%を占める.

▼分類

 胃静脈瘤は,食道静脈瘤との連続性が認められる胃噴門部静脈瘤と,交通のない胃穹窿部静脈瘤(孤立性静脈瘤)に分

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