◎胃アニサキス症(gastric anisakiasis)
▼病態
アニサキス属線虫の幼虫が寄生する魚介類(サバ,アジ,イワシ,サンマ,イカなど)を生で摂取し,幼虫が胃壁に侵入することにより発症する幼虫移行症である.
▼疫学
諸外国に比べわが国の発生は多く,年間約7,000件と推計されている.
▼診断
魚介類の生食後数時間して,激しい上腹部痛,悪心,嘔吐をもって発症する.内視鏡検査で,頭部が胃壁に刺入した白い糸状の虫体を確認する(図4-25図).時に,AGMLや粘膜下腫瘍様隆起を形成することがある.虫体が確認できない場合は抗アニサキス抗体の測定も有用である.一般的に初感染の場合は無症状に近い(緩和型)が,すでに感作を受けている場合は即時型アレルギー反応から激しい症状が起こる(劇症型).
▼治療
胃粘膜に刺入した虫体を内視鏡的に摘出する.
▼予後
数日後にじん麻疹やかゆみといったアレルギー症状がでることがある.アニサキスによる食中毒を診断した場合,24時間以内に保健所に届け出る必要がある.
◎腐食性胃炎(corrosive gastritis)
▼病態
酸・アルカリ製剤など組織傷害性の強い物質の飲用により生じる化学的粘膜損傷である.酸性物質は,粘膜の凝固壊死を生じ表層の痂皮形成にとどまることが多い.一方,アルカリ性物質は鹼化作用や蛋白の融解作用により組織壊死を引き起こし,傷害は深部にまで達する.ただし,酸性物質が胃に到達すると幽門攣縮が起こり前庭部に停滞するため,幽門狭窄をきたす場合がある.
▼分類
急性壊死期,潰瘍・肉芽形成期,瘢痕・狭窄期に分けられる.
▼診断
ほとんどが自殺企図により,原因物質は入手が容易な消毒薬,洗剤などである.内視鏡検査は,以前は禁忌とされていたが,炎症の程度を評価し治療方針を決定するうえで有用である.
▼治療
急性期には出血や穿孔の可能性を念頭におき,外科的治療の