診療支援
治療

(3)吸収不良症候群
malabsorption syndrome
大宮 直木
(藤田医科大学教授・消化管内科学)

疾患を疑うポイント

●小児~高齢者のいずれの年齢でも発症しうる.

●脂肪便,四肢の浮腫,低蛋白血症,低コレステロール血症がみられる.

学びのポイント

●原発性吸収不良症候群と続発性吸収不良症候群に分類される.原発性の要因としてはセリアック病や刷子縁膜病,無βリポ蛋白血症などの先天異常などが,続発性はCrohn病や短腸症候群,アルコール依存症の粘膜傷害などによる症候性吸収不良症候群と小腸以外に異常を認める消化障害性吸収不良症候群に細分類される.

●実臨床では慢性膵炎などによる膵外分泌障害,Crohn病,胃全摘後・膵全摘後・短腸症候群などの手術後吸収不良症候群が多い.

▼定義

 腸管からの各種栄養素(糖質・蛋白質・脂肪・ビタミン・ミネラル・水・電解質など)の吸収不良により惹起される,種々の臨床症状を呈する症候群.

▼病態

 食物は①口腔内での唾液(唾液腺アミラーゼ,舌リパーゼ含む)を混じた咀嚼,②胃内での胃酸,ペプシン,キャッスル内因子,胃リパーゼを含む胃液とのかく拌・蠕動運動による消化,③十二指腸での膵液・胆汁との混和による消化,鉄・カルシウム・マグネシウムの吸収,④空腸・回腸での膵液・胆汁・腸液との分節・振子・蠕動運動によるかく拌・消化と単糖類・二糖類,アミノ酸・ペプチド,遊離脂肪酸・コレステロール,水溶性・脂溶性ビタミン,各種電解質の吸収,⑤回腸末端での胆汁酸・コレステロール,ビタミンB12の吸収が行われる.

 これらの各ステップは管腔内消化相〔Ⅰ.胃相(エマルジョン),Ⅱ.膵相(加水分解),Ⅲ.胆汁相(ミセル形成)〕,小腸粘膜相〔Ⅳ.細胞膜相(膜透過),Ⅴ.細胞内相(再エステル化,カイロミクロン形成)〕,Ⅵ.転送相(脂肪粒子放出・転送)に大別され,転送相ではカイロミクロン・VLDLは乳び腔,腸リンパ管,胸管を介し大循環系に流れ全身に運ばれる.二糖類・単糖類,ペプチド・アミノ酸,遊離脂肪酸は

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